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wisc-iv(3)長男の凸凹

WISC-IVの結果、長男はワーキングメモリー(WMI)が最も凸で、知覚推理(PRI)が最も凹な子であることが分かった。

ワーキングメモリーについては短期間で何かを語れるレベルには到底達しないと気づいて、現時点では参考にしたリンクを掲載するに留める。一方、WISC-IVで扱うワーキングメモリーについては書いてみようと思う。

WISC-IVのワーキングメモリー(WMI)

まず、WISC-IVのワーキングメモリーについては、「言語的ワーキングメモリーのみを扱っており、空間的・視覚的なワーキングメモリーは扱っていない」(WISC-IVの臨床的利用と解釈 p.99)。

WISC-IVのワーキングメモリー(WMI)で分かるのは、聴覚に重点を置いた、言語性WMIのうち、一部のみであるらしい。それでも、同じWISC-IVの別の指標から視覚性の短期記憶力とワーキングメモリーを推定することは可能だそうだ。

それでも、WISC4からある程度視覚性短期記憶力と視覚性ワーキングメモリーを推定する事は可能ではあります。
知覚推理(PRI)に含まれる「絵の概念・行列推理」は非言語性流動性推理であるため、やや視覚性ワーキングメモリーに近く、処理速度(PSI)「積み木模様・絵の抹消」は、視覚的処理能力であるため、視覚性短期記憶力に近い存在ですが、絵の概念や行列推理は、自閉症のこだわりの影響をうけますし、積木模様や絵の抹消は発達性協調運動障害の影響を受けるため、各々を分離して検証する事は出来ず、あくまで推定できる程度です。

発達障害とIQ検査とワーキングメモリー
(出所:生馬医院の医師)

4つの指標でどのような能力を測っているかが下記の図で示されている。

WISC-IV知能検査 ― 改訂の趣旨と活用の変化 
(著者:筑波大学 大六一志)
http://www.human.tsukuba.ac.jp/~dairoku/files/Resume121031.pdf
出所:同上

http://www.human.tsukuba.ac.jp/~dairoku/files/Resume121031.pdf

長男の凸凹にあったサポート

長男の場合、ワーキングメモリー(WMI)が150台で最も凸、知覚推理(PRI)が120台で最も凹であることを踏まえてだと思うが、検査報告書に次のように書かれている。

「見て考える」よりも、「聞いて考える」力のほうが顕著に強く、また、「書いて答える」より「話して答える」ほうが得意と言える。

言葉によらない絵や図形などの課題について関連性を推理したり、解くための手がかりを見つけたりすることはどちらかと言うと苦手としている。言葉での説明なしに、ぱっと見て状況を理解すること(いわゆる”察する”力)や、本人にとって無意味だと感じられるような、機械的な作業を繰り返すことはやや苦手と言える。
初めて経験する活動については、あらかじめ活動の流れや目標、それをやることの意味などを言葉で伝えておくとよい。見通しや意味が頭に入ったほうが、課題へ取り組むモチベーションも維持しやすくなる。

長男のある時点におけるWISC-IVの検査報告書

凹の知覚推理

長男に検査どうだった?と訊いたら、「上と下の絵で関連性を見つける問題が難しかった」と言っていた。知覚推理の「4.絵の概念」を特に苦手としたのだろう。制限時間はなかったそうだが、あまり待たせても悪いと思ったそうだ。

WISC-IV知能検査 ― 改訂の趣旨と活用の変化

「絵の概念」は、帰納を用いるための限定的な流動性推理(Gf)を主に測定している。これは、問題や一連の題材の基となる特性(例えば、ルール、概念、プロセス、傾向、仲間分け)を見つける能力である。

エッセンシャルズ WISC-IVによる心理アセスメント p.165
(著者:D.P.フラナガン, A.S.カウフマン)

知覚推理(PRI)については、上の図にある指標得点の解釈を見ると、「片付け」という記述がある。120以上だと1標準偏差以上だ。これならもう少し片付けが出来ても良さそうにも思ったが、それを打ち消す他の要因があるのだろうか。

また、先日長男の心を診てもらいに大学病院に行った際、自閉症やADHDの話が出たこともあって、「絵の概念」で得点が低かったのだとしたらサポートの仕方は今のままで良いのだろうかと考えてしまった。

凸のワーキングメモリー

最も凸なワーキングメモリー(WMI)については、検査者から「2つとも良く出来ていて、最終問題まで到達しました。」と言われている。この2つの意味が、「3.数唱」と「7.語音整列」なのか、順唱と逆唱の2つを指しているのかは聞きそびれてしまった。

長男曰く、「14.算数」のような計算はしなかったと言っていた。それで最終問題まで行ったとしたら、数唱(順唱と逆唱)と語音整列の2つをやったということなんだろうと考えている。

最後の問題がクリアできたのかは分からないが、その手前までは少なくともクリアしたのだろう。WMIが良くできたことは間違いないらしく、検査者の方も長男のWMは印象に残ったそうだ。

冒頭で書いたことの繰り返しになるが、ここでは言語性ワーキングメモリーのみを見ている。下記を見ると、読書も言語性WMになるそうで、長男は本を読むのが好きなので良かったなと思う(読むスピードがかなり速いので、もしかすると速読しているのかもしれないが)。

通常、勉強するとき、多くの学生は本、教科書、参考書などを『読む』事で学習しますが、この作業で主に使用する経路が言語性ワーキングメモリーです。黙読するとき、多くの人(速読者は除く)は心の中で声を出して読んでいます。その時に使う部分です。音韻貯蔵庫に入った言葉は、構音リハーサルによって、消えそうになっては、よみがえるという事を繰り返しながら、言語の短期記憶が維持されます。

発達障害とIQ検査とワーキングメモリー
(出所:生馬医院の医師)

※なお、これ以降は、これからWISC-IVを受ける予定で、まだ未実施の方は読むことをお勧めしておりません。長男がどうやってWMIに取り組んだか検査中の行動について書いています。


数唱:決められた数字(数系列)を読んで聞かせ、それと同じ順番で(順唱)、あるいは、逆の順番で(逆唱)その数字を言わせる。

語音整列:一連の数とカナを読んで聞かせ、数は昇順に、カナは五十音順に並べかえさせて言わせる。

WISC-IV 臨床的利用と解釈 p.11
(著者:A・プリフィテラ、他)

数唱は、順唱と逆唱を本来は分けて結果を見ないと意味が無いそうだ。短期記憶と、ワーキングメモリーのどちらかに問題がある場合でも、合算してしまうとそれが見えなくなる(生馬医院の記事を参照)。

WISC-IV知能検査 ― 改訂の趣旨と活用の変化

長男はWMを得意としていたが、どうやってやったのかと訊いたら、「リズムにして覚えた」と言っていた。要は、長い数字の羅列を、1桁ずつばらばらに覚えるのではなく、3桁とか4桁のひとかたまりにした、ということらしい。

これはチャンク化を能動的に実行したということだろう。こうすると処理単位を減らせてワーキングメモリーへの負荷が下がって、結果的に長い桁数でも覚えやすくなるのだろう。こういった工夫を瞬時に集中して行なったのだと思う。

完全には鮮明になっていない

本当は、下位検査の結果も開示されているともっと色々なことがわかったのかもしれない。残念ながら長男の場合、守秘義務の観点から下位検査の結果は親にも開示されていない。

色々なことを考えてしまうが、WISC検査は診断を目的としている訳ではなく、得意不得意を見つけて支援方法を考えるためのツールであると理解している。

知能検査で発達障害の否定も肯定もできません。
否定に使ってはいけません。
肯定につかってもいけません。

発達障害とIQ検査とワーキングメモリー
(出所:生馬医院の医師)

また、IQは固定の値ではなく、将来変わり得るということも理解している。

その上で、聴覚と視覚でここまで差がつくのはなぜだ?という疑問が残る。長男は色覚異常も持っている。板書含め、視覚的なことではちょくちょく苦労している。WISCは色覚は関係ないだろうから、なんだろうなと思う。

答えに行き着いたというほど明確にはなっていなくて、ただ漠然と、長男に必要なサポートをしてやれているのだろうか、我が子がどうやったら一番幸せになれるのだろうかということをずっと考えている。

引用した図書