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これはおもしろい‼︎論文紹介【薬の種類や多剤併用が及ぼすヒト腸内細菌への全貌を解明】

今回は個人的にめちゃくちゃテンションの上がる論文を見つけたのでご紹介したいと思います‼︎


こぅいうので興奮するってかヤバい奴でしょ?笑
我ながらキモっ!て思いますが、まぁ変人なんでご了承下さい笑


さぁ、余談はさて置き、めちゃくちゃおもしろい論文を見つけました!


今回ご紹介するのは
東京医科大学、国立国際医療研究センター、早稲田大学の研究チームより2022.7.22に発表された研究論文。



薬の種類や多剤併用が及ぼすヒト腸内細菌への全貌を解明~世界に類を見ない腸内細菌叢ビッグデータベースを構築~】


全文を見ることを強くオススメしますが、ここでは簡単にまとめた内容のみ掲載したいと思います。

詳細を知りたい方はリンクを貼っておきますので、是非全文も覗いてみて下さい☆


この研究の見所(概要)


・日本人約4,200例を対象に、膨大な生活習慣や臨床情報と腸内微生物叢情報を統合した世界初の大規模マイクロバイオームデータベースを構築。

・腸内細菌叢に影響を与える外的・内的要因を網羅的に調査し、薬剤投与が食事、生活習慣、疾患よりも腸内細菌叢に与える影響が強いことを発見。

・腸内細菌叢に影響を与える薬剤の種類を詳細に調べ、影響の強さでランキング化したところ、消化器疾患薬や糖尿病薬の影響度が高いことを発見。

・薬剤の多剤併用(ポリファーマシー)による腸内細菌種の変化、細菌の遺伝子機能プロファイルの変化、薬剤耐性遺伝子プロファイルの変化を同定。

・個々の薬剤や多剤併用による腸内細菌叢の変化は、薬剤の使用中断や投与数の減少により元の状態にまで戻すことができることを見出した。


研究により得られた知見・結果


1.世界に類を見ない情報量と多数例の腸内マイクロバイオームデータベースを構築
・日本人約4,200例を対象に、詳細なメタデータとマイクロバイオームデータを統合した大規模データベースを構築。
全対象が日本人というのがミソです☆


・メタデータには、多彩な疾患や薬剤情報、食習慣、生活習慣、身体測定因子、運動習慣などが含まれ、特に薬剤に関しては750種類以上の薬剤投与歴を網羅的に収集。


・日本人約4,200例の糞便を解析
→腸内細菌1,773種(種レベル)、 腸内細菌の遺伝子機能10,689個、薬剤耐性遺伝子403個を同定した。

→日本人の腸内にはBacteroides、Bifidobacterium、Clostridiales、Blautia、Faecalibacteriumなどの菌種(属レベル)が多いことを大規模データから明らかにした。



2.日本人の腸内細菌叢に影響を与える要因をランキング付け

・日本人の腸内細菌叢を対象にした本研究により
1位 薬剤
2位 疾患
3位 身体測定因子(年齢・性別・BMI)
4位 食習慣
5位 生活習慣
6位 運動習慣

の順であることが明らかになった。

この結果には驚きでした‼︎
疾患よりも薬剤の影響の方が大きいこと。

また、身体測定因子と食習慣には微々たる差しかないこと。
食習慣に関しては身体測定因子より有意に高いと思ってました。

さらに薬剤の与える影響は食習慣や生活習慣、運動習慣よりも3倍以上も強いということ!
これにはとても驚きました‼︎



3.腸内細菌叢に影響を与える薬剤の種類をランキング付け

1位 消化器疾患治療薬
2位 糖尿病薬
3位 抗生物質
4位 抗血栓薬
5位 循環器疾患薬
6位 脳神経疾患薬
7位 抗がん剤、免疫抑制薬
8位 筋骨格系疾患薬
9位 泌尿器・生殖器疾患薬
10位 その他(呼吸器系疾患薬や漢方薬)

抗生物質は1位に来るかと思ってましたが、まさかの3位‼︎∑(゚Д゚)
しかも、糖尿病薬の方が上位にランクインしたのはかなり意外でした‼︎
ふむ…実におもしろい(゚∀゚)

・消化器系疾患薬の中では
PPIやP-CABと呼ばれる胃酸分抑制薬
浸透圧性下剤
アミノ酸製剤
胆汁酸促進剤
の影響が強い。

・糖尿病薬の中では
αグルコシダーゼ阻害薬と呼ばれる糖尿病薬が最も強く影響することが判明



4.薬剤の多剤併用(ポリファーマシー)が及ぼす腸内細菌叢の変化を同定

4,200例の中で、10剤以上の薬剤を服用している患者は603例(14%)

薬剤投与数が増えるにつれて腸内に常在している日和見感染症を引き起こす病原菌が増えることを発見。

特に、Enterococcus faecium、Enterococcus faecalis、Klebsiella Oxytoca、Klebsiella pnuemoniae、 Acinetobacter baumannii、Streptococcus pneumoniaeなどの菌種が薬剤投与数とともに腸内で増加することを見出した。


薬剤投与数の増加は多様な菌種の減少と関連しており、その多くは酪酸や酢酸など短鎖脂肪酸を産生する菌であった。
腸内細菌により生成される短鎖脂肪酸には免疫の恒常性を保つ働きがあることが分かっており、これら菌種が減少することは宿主の免疫恒常性にも影響があることが予想されます。




5.薬剤開始による腸内細菌叢の変化と薬剤中止による腸内細菌叢の回復力を解明

PPI(胃酸分泌抑制薬)の使用を開始した後、Lactobacillus属やStreptococcus属の腸内細菌の増加やE,faeciumやS,pnuemoniaeなどの日和見感染症を引き起こす病原菌種が増加することが判明。

一方、PPIの使用を中断すると、これら菌種は減少することが判明。

これらの結果は、横断研究で明らかとなった結果と一致しており、実際に薬剤が原因となって腸内細菌叢が変化したこと、さらにはPPIの使用により変化した腸内細菌叢は、PPIの使用を中断することで元に戻せる可能性が示唆された。



6.   今後の研究展開および波及効果
こちらは研究者の先生方の原文で是非、楽しんで頂きたいです。
※私が口を挟んだらあかん気がします笑



いかがでしたでしょうか?
薬剤と腸内細菌業の関係…しかも対象が日本人というのが本当に参考になる論文でした!


これからも、たまーにおもしろい論文を見つけたら紹介しますので論文にご興味のある方は楽しんで頂けたらと幸いです♪


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