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ミュウとオムレツバーガー




ミュウミュウミュウ、
オムレツバーガーくださいな、
駅前から私のあとを
黒い子猫がついてくる
夕焼け小焼けの商店街

ブティックの1000円の
ワゴンセールはいつも、
何も見つけられない

200円の苺のショートケーキは 
いつも上手く掴めない
280円の花束はどれを選べばいいのか


バルコニーの広さだけが取り柄の
雨の染みが目立つ
9階建ての中古マンション、
もうご覧になりましたか?
駐車場は45°の急傾斜
ええ、大丈夫ですよ!
ギアを間違えさえしなければ


私が住むのはマンションの
谷底のボロアパートで
冬には木枯らし吹き荒れて
窓は空に向かって凍り付く

いまは西陽が厳しい夕陽の
残暑で皮膚が燃えあがり
クーラーも壊れたままの
こんなところまで
子猫は付いて来て


晴れの反対はレハではありません、
雨です
好きの反対はキスではありません、
なんだと思いますか?

幼稚園の先生の卵たちの声が
高い空から降りてくる

きっと、おまえは簡単に
産み落とされて
捨てられたことにも気づかずに
私に付いてきたんだね?

バスタブにラベンダーの香り
黒い子猫と湯気はユラユラリ
ステンレスのバスタブの縁を
何度もくるり回ってネーコの目
その足元が滑らないようにと願う


おやすみ、おはよう、
たとえ、それが一度きりでも
いつものようにバイトして
昨日、食べ損ねた
オムレツバーガーと
ビールを買っても、
駅前の子猫はもういない

ミュウミュウミュウ、
オムレツバーガーくださいな、
おやすみなさい、
小さな迷子の黒い子猫、
夕焼け小焼けの商店街、
たとえ、一度きりでも


#現代詩
#自由詩
#この街がすき
#黒い子猫















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