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挫折からの脱出 (5) 最初の一歩

 挫折からの脱出について、最初の一歩とその後の過ごし方について話していきましょう。

 感情が揺れ動かない、自立した生活を送っていない、動機をもっていないひとに他人がいくら助言したとしても全く意味を持ちません。そもそも聞く耳をもっていないと同時に社会的な結びつきの経験がないので、せっかくの助言を受け止めて、自発的に行動をあらためることはありません。

 残された道は、そのような状態が将来取り返しのつかない挫折に陥ってしまうことを本人が自覚することです。しかし、いくらその行動を改めるように強制しても意固地になって自分の殻に入ってしまうので、細心の配慮が必要です。そのような状況にいることを本人を自覚させるためには、仕掛けが必要となります。

 ここで教訓となるのは「北風と太陽」の昔話です。北風がいくら強く吹いてもコートを脱ぐことはなく、暖かい太陽の日でコートを脱ぎ、胸襟を開くようになるのです。挫折の入り口にあるひとは、自我の目覚めがなく自立した精神を持ち合わせていません。初期の段階では、そのひとが行動を取る際に答えを求め、そして選ばせることが有効な手段となります。具体的には、夕飯ができたと声をかけるのではなく、何時に夕飯にするのか、献立は何するのかを問うことです。
 
 生活を送るのに自分からの指示がない限り物事が進まない状況を作ることが第一歩となります。

 表現力が乏しく、欲求の伝え方ができない、そして言葉にしたりするのが不得意であるので最初はもどかしい印象を持つでしょうが、ちょっとした仕草から何を訴えているのか、要求しているのかを読み取りましょう。ここで短兵急に答えを求めると強いストレスを与え、いわゆる「キレる」ことになり逆に悪影響を与えてしまいます。じっくり数ヶ月かけてこの初期段階を踏んでください。

 もし、自分自身が挫折に入り口にあって第3者からの助言をもらう環境になければ、自問自答してその日その時の行動を自分の意思を明確にして決めてください。分かりやすい例は、通勤通学の経路を日々変えていく、出勤登校時刻を変えて自宅から出発する、夕飯を自炊にして献立を考えて買い物にいくなどです。常に考えて、結論をだすことは最初は心の負荷になりますが自立への第一歩と考えてください。

 数ヶ月経ち、挫折の入り口にあるひとが自分の欲求は自分で解決しなければならない状況に対応できるようになったら次のステップに移ります。この段階では、ちょっとイライラしたり、乱暴な言葉を吐くことがありますが遅れてきた反抗期を迎えたことになるので、自立へのスタートとして良い兆候と思いましょう。

 次の段階は、我慢するを覚えることです。

 欲求を伝え、自分の行動を決断するようになってもそれがいつも実現できる訳ではないのです。社会との結びつきは、自分の思うようにならない局面をどのように折り合うか、妥協するか、乗り越えるかの連続です。我慢を覚えて自身の心をコントロールする方法を会得させる手助けをしていきましょう。そして我慢は炭の火起こしに似ています。この段階は時間がかかりますが、最も重要な時期であり、いままでの自分自身からの脱皮を成し遂げるきっかけとなるので、登山するつもりで一歩ずつトライしてみてください。

 我慢を覚えるには、まず単純なルーチンから始めるのが手がかりとして良いでしょう。
 ルーチンの例
  朝起きたら散歩をする
  スマホゲームを止める
  生き物を飼う
  お小遣いをためる

 このようなルーチンを我慢して続けると、心身が健康になる、感受性が豊かになる、買いたい物の選択肢が広がるなどご褒美が待っています。我慢すれば自分の周りの生活がより豊かになることに気づくようになってきます。我慢する心はやる気の源であることにも気がつきます。我慢できるひとは、人生の再スタートを切る気のあるひとと言い換えることもできるでしょう。

 このように我慢を続け、自分自身をコントロールする実績を積み重ねていきます。そして、あるとき自分の持っている欲求の高まりにも気が付くようになってきます。人間の3大欲求である食欲、性欲、睡眠欲が旺盛になるでしょう。日常の行動が、食材選びが楽しくなる、身だしなみを整える、化粧をする、時計を気にするようになるなど前向きな感情に基づいたものに変っていきます。

 遂には、一旦我慢することを覚えると持続的に心が成熟するステージに移ることになります。

 それでは、持続的に心が成熟するとは何か、どのようにそのステージを迎えるかについて次章で説明していきます。

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