仏勉人好のフランス留学準備。日常会話ってなんだろう編。
ボンジュール。
ジェーム ル カフェ。
僕はふつべんひとよし。フランスの大学院に進学を希望している20代だ。
知り合いに日本語を教えて欲しいと言われた
ついこの間、日本の会社で働いているベトナム人の知り合いから、日本語を教えてくれないかと言われた。
彼は二児のパパだ。奥さんの留学に伴って日本に越してきた。
日本語の語学資格はもっていない。
専門に関しては日本語で話せるし、商談も日本語でしている。
けれども、会社の人との日常会話についていけないと困っているらしい。
僕は、この話を聞いて、そんなことが起こりえるのかと、まずもって驚いた。
彼はすでに日本語が話せる。
一般的には、そう描写できるはずだ。
なぜかって、彼は日本の会社でただひとりの外国人として働いているし、商談もしているし、日本で暮らしている。
けれど、彼にしたら、日常会話ができないから、
日本語が話せるとは言えないのだそうだ。
ここにきて僕は、「○○語が話せるようになる」という文句に疑問を抱き始めた。
同時に、強く浮かんできた疑問は、「日常会話ってなに」だった。
僕からしてみれば、「日常会話ができる=話せる」という等式が成り立っていたからだ。
日常会話ってなに
日常会話とはなんだろうか。いくつかの英語学習動画で「日常会話」として紹介されていたテーマを分類した。
挨拶、自己紹介
食事の話、予定を立てるときの会話
家事
感謝、謝罪
健康、体調
天気
休日のこと
会話の潤滑油的な表現(聞き返す、質問する、感嘆詞、話の話題を変えるためのフレーズなどなど)
なんとまとめるべきだろうか。
場所を問わず話すテーマであったり、使う構文を指すのだろうか。
状況というよりは、物理的な環境に左右されにくいテーマというべきだろうか。
例えば、挨拶は、家でも、道ばたでも、学校でも、職場でもする。
ゴミをどこに出すのかとか、コップをどこで洗ったらいいかとか、家事っぽい質問も当てはまる。
家ではもちろん、学校や職場でも違和感がないからだ。
程度の差はあれ、衣食住が行なわれる場であれば、使用される会話だろう。
そう考えると、「日常会話」とは、生活のための会話とも言えるかも知れない。
天気の話ですら、洗濯物に影響するし、食に関連してるし、「帰りは自転車を置いてバスで帰らなきゃ」みたいに、暮らしに欠かせない移動という動作に紐付けられる。
一方で、これらは雑談と呼べるよなとも思った。
当たり障りがないからだ。
生活に関連するテーマであるだけあって、誰とでもそれなりの会話が続く話題なのだ。もしくは、誰とでも、いつかは交わすことになる言葉の集まりとでも言おうか。
ビジネスでの「日常会話」
ベトナム人の彼は、職場で日常会話ができるようになりたいと言っていた。
「職場で」というのがポイントだ。
これは僕の意見だけど、職場(以下ビジネスの場)では、他に比べて特に、雑談的な日常会話が求められるような気がする。
言い換えれば、当たり障りのない、生活に関する話だ。
では、「当たり障りがない」ってどういうことだろう。
人間、物理的なパーソナルスペースがあるって言うけれど、
会話にもある気がするんだ。
よく言われるところの「踏み込んで欲しくない話」だ。
その「踏み込んで欲しくない」テーマに、思いがけず触れてしまったり、
深掘りしてしまう恐れのないもの、という意味で「当たり障りがない」と言うのだろうか。
もしそうだとして、この感覚をどうやったら違う文化背景で育った人に共有できるのだろう。そもそもできるのか疑問だ。
まあ、いいや。ひとまず、
ビジネスでの日常会話の反例を求めてみようかな。
年齢、学歴、職歴
結婚の有無、子供の有無
政治の話
宗教の話
確かに、生活に根ざした話もあるが、いわゆるコンプレックスの逆鱗に触れやすい話題でもある。
さらには、政治観や宗教のような、意見が対立しやすい話題もあるだろう。
僕なりのビジネス日常会話の境界線
僕は大学の4年間、とある大企業でアルバイトをしていた。
大きなフロアで、部長級の人の近くに座って事務をしていたし、
社員の人の出張に同行することも多かった。
当然、「雑談」をたくさんしてきた。
僕は割と話しかけるのが好きで、いろんな話を持ちかけたし、社員のみなさんも気さくな方が多くて、話しかけてくれることが多かった。
そんな僕が、「雑談」に関して、この経験を振り返って気づいたことを羅列しようと思う。
・大学・院卒であることは言っても、大学名までは出さない
・年齢を言うことに躊躇を感じている様子はない。実のところそんなに関係ないから
・むしろ、何年入社で、誰と同期とかの方が話題としては、デリケートかも
・お給料の金額は言わない
・家賃も言わない
・稼いでいるお金、払っているお金について、具体的な金額を聞いたことがない
・大学出てすぐの新入社員さんとは、恋愛や結婚の話をしたこともあるが、あまり盛り上がらないし、適切な気がしない
・恋愛/結婚/出産のテーマはいつも仕事に紐付いている
・常に仕事ありきで話をする。僕と彼らの共通項だからだろう
・転職の話もよく聞いた。このアプリいれてるとか。今の職場のここがよくて、ここが悪い的な
・「転職考えてますか?」も社員さん同士の会話でまあまあ聞くフレーズ
・学生時代の勉強の話とか卒論のテーマとかはあまり盛り上がらない。
・むしろ、部活の話とかバイトの話を聞いてもらうことが多い
・「休みの日はなにしてるの」は定番フレーズ
・「趣味はなんですか」は言わない。
・足が痛いとか肩が痛いとか、「痛い」って話は多い気がする
・見た目に関する話は今のご時世的にグレー
・「やせた?」って聞いてくれた社員さんに、後日謝られた経験がある
・天気の話はするけど、仕事に結びつけるもの。「ああ、雨ですね。タクシーに変更しようか」みたいな
もちろん、役職や年齢に応じて、聞いたり聞かなかったり、聞かれたり聞かれなかったりということがある。
部長クラスの人とは趣味の話が多かったり、他の社員さんについての話をしてくれたりとか。
若い社員さんとは大学時代のサークルの話とか、転勤、転職の話が多かったりした。
日本語のビジネス会話の授業
さて、ここまで「日常会話とは」「雑談とは」「ビジネス日常会話とは」のような話をしてきた。
ようやく本題に入ろう。
今までの話を踏まえた上で、どんな授業をするのがよいだろうか。
ひとまず、僕が思う、つまらない日常会話の授業から考えを膨らませていこうと思う。
・フレーズをひたすら練習する授業
この授業はフレーズを覚えるのに心強いかもしれないが、ひとりでもできてしまう。YouTubeや音声付きの本なんかあれば、すぐ始められる。ネイティブ講師の存在意義がよく分からない。
・知らない誰かの日常会話を聞いてまねする授業
この授業は実践的だが、面識のない人物の日常会話に興味をもてない恐れがある。興味をもてなければ授業への集中度が下がり、学べることが浅くなる恐れがある。
・ネイティブ講師と日常会話をする授業
この授業は、アウトプットを前提とするのでスピーキングの能力全体は上がりそうな気がする。しかし、生徒自身がテーマを絞って予習したり、復習したりといった行動が必要になりそうだ。そうでなければ、もっている知識だけで、だらだらと話をしてしまい、新しく何かを達成することができなくなる恐れがある。
・文法を固める授業
この授業は、会話の基礎を万丈にするという意味ではよいが、テーマに関する語彙の強化や、スピーキングの能力向上に役立たない恐れがある。
・新しい単語をどんどん覚える授業
この授業は、目的のテーマに関する語彙力を上げることができる。ただ、日常会話は相手との距離感を考えた上でのキャッチボールが必要となるので、そういった感覚を養うための工夫が必要だ。
会話の授業は難しい
知人に個別の日本語クラスをするということで、現実的にクラスの内容を考えてみたが、なかなか決めがたい。
YouTubeを開けば、日常会話のフレーズ集や、会話なんてものはいくらでも見つかる。
その中で、あえて料金を払って、ネイティブ講師に授業を頼むのだ。
ネイティブ講師が個別に教えることのメリットを最大限、提供したい。
このように考えると、結局は、実際に会話をすることを中心に据えるのがいい気がする。
でも、これが難しいんだよね。
繰り返しになるが、
生徒のアウトプットを頼りに、授業を進めて行くことになるが故に、
生徒が何をインプットするかという点がコントロールしづらいのだ。
単語や構文、文法などの知識面でのサポートが望ましいのだが、対処療法的な気がしてならない。
生徒自身が独学で学び、ネイティブ講師との授業は実践の場だと割り切っているのであれば話は別だが。
そうでなければ、会話の授業から、学べることが未知数すぎる気がしてならない。考えすぎだろうか。
他にも、会話の授業の難しさと呼べるものがある。
訂正しづらいという点だ。
・相手しか知り得ないことを話すのだから、
訂正によって、その内容が変わってしまわないか気をつけないといけない
・相手の単語や構文選びに特定の意図があるかもしれないので、
そこを切り倒さないよう配慮が必要
・皮肉やユーモアなど、表現の仕方にその人のカラーがあるので、
発言の構造に注意を向ける必要がある
じゃあ、結局どうすればいいのか
日常会話の授業について考えたけど、よく分からなくなってきた。
「日常会話を教える最高の方法とは」
このような問いは、どうせ答えのない問いだ。
コミュニケーションや言葉の本質について勉強を続けながら、生徒の日本語の会話について、その場その場の気づきの共有に努めることが必要、
今言えるのは、これくらいだ。
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