見出し画像

新世紀マーベラスnovel episode1(45)

「ハッ、やってみろよ」
大げさに肩を竦めて見せるアマレスの背後から、メアリーが切りかかる。
「レイにはあげないよ――!」
「てめえの方は芸がねえなぁ!」
両手剣を振り向きざまに袈裟斬り。
メアリーは先刻よりも数段素早い動きで体を回転させそれを避けると、勢いを乗せた蹴りを放つ。
「チッ!」
「さっきのお返し」
「効いてねえよ」
蹴り足をそのまま退く動力に変えて返しの剣閃を紙一重で回避。
距離が空いたのを見て、エマが大杖を振る。
「炎熱よ、疾く敵を穿て――フレイムピアサー!」
熱線が絶え間なくアマレスを追い、落ち着く暇を与えない。
「今度はダンス?」
愉快そうに笑うメアリーが再び接近。
「くそが――」
咄嗟に振るわれた剣に跳び上がる。
空中で熱線の隙間を掻い潜りながらメアリーがナイフを振るう。寸でのところで空を切る。
「あは、惜しいなぁ」
その間、レイは加勢するでもなく、剣を眼前に構えて精神を統一するように深く息を吐いている。
「私は真祖のヴァンパイアだ」
不意にその紅い瞳がアマレスを見据えた。
「ぁあ――っ⁉ だからどうした⁉」
メアリーをタックルで弾き飛ばしたアマレスに、レイは不敵な笑みを浮かべた。口元に真っ白な牙が覗く。
「通常のヴァンパイアとは違い、太陽には焼かれず、生きるために吸血を必須とはせず。だが、真祖であることの本質はそこではない。それは――」
レイが肉薄する。
その速度は先刻の比ではない。しかし――
「ふん。確かにさっきよりぁはええが、大したほどじゃねえよ!」
両手剣を構える。
凄まじい勢いで上段から振り下ろされた紅い剣閃。
だが、アマレスの反応が上を行く。
迎えうつように両手剣を閃かせる。
剣が交差し、必殺の一撃が止められる――
「一太刀で終わらせる、だったかぁ? こんなもんか――」
 ――はずだった。
押さえられたレイの剣から放たれた紅い斬撃だけが、アマレスの剣を〝すり抜ける〟。
「な――っ⁉」
アマレスの胴体が袈裟斬りに裂かれた。
「ぐがぁぁ――っ」
「血と、血を取り入れたものを従える〝隷従の能力〟だ」
倒れ伏すアマレス。
己の力を忌むように、レイは目を細めた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?