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幽霊ホテル/Haunted hotel【オヤジの観察 #4】

どれほどの人達が幽霊とかオカルトの存在を信じているのだろうか?
TV番組で、亡霊がでるとウワサのホテルや事故物件に泊まる、廃墟ホテルに潜入して超常現象を検証する…といった企画をときどき目にする。
信じざるとも「怖いもの見たさ」で好奇心のある人は多いのだろう。

実は一五いちごオヤジ、この類の出来事に何度か遭遇した経験がある。 
ここでご紹介する一件はオヤジの100%実話、会社でも話が広がって有名人、記憶が薄れないようにメモとして残しておいたものだ。


Lighthouse Inn

20年ほど前のアメリカ出張、うすら怖く、奇妙で、そして後味の悪い出来事に遭遇した。
場所は、ニューヨークとボストンの真ん中あたりのコネチカット州ニューロンドン、研究本部キャンパス近くにあるLighthouse Innという、名のとおり風光明媚な湾を望む岬の突端にある小さなホテル。
前泊で同僚と二人、ボストン観光した後の移動、チェックインしたのは遅く、日曜の夜19時過ぎ。
建物は古く、玄関ロビ―に通じる石段が丸みを帯びて歴史を感じる
大きな会議ではなかったが、通常、会議の規模に関わらずシティホテルを使うことが多く、アットホームな雰囲気漂う年代物のこじんまりした木造ホテルは珍しい。

1号室

フロントで鍵を渡されると、部屋は2階にある1号室
一般的に部屋番号は2階の1号室であればNo.201などの数字を使うが、
キーホルダーにはNo.1としか刻印されていない。
フロント前から緩くカーブした階段を上がった正面が1号室

”お姫様ベッド”のスィートルーム

部屋に入って目を疑った。目に飛び込んできたのが四方にレースがぶら下がったいわゆる「お姫様ベッド」、部屋は重厚感があって広く一人では持て余すサイズ、ソファなどの家具類はアンティークなもので統一されているスィートルームだ。

レースがぶら下がるお姫様ベッド

部屋の期待値が低かった分、気分が高揚して会議前日の憂鬱な気分を打ち消してくれた。
自宅の狭い、安いが染みついた身にはまったく不相応、恥ずかしげもなく中年オヤジは既に『お姫様モード』、ミスマッチなベッドの上でゴロゴロ転がってみる。 
食事前、同僚の部屋をチェックにいくと、ごく普通の部屋に小さな家具、彼にオヤジの1号室を見せると、「ウソやろッ!」あまりのギャップに目を剝いて驚いた。
「部屋を交換して欲しい」と言われたが、オヤジの人生で二度とないであろう経験、譲るわけにはいかぬ。(後で後悔することになるのだが…)
その後、下のレストランで食事、バーで一杯、ほろ酔い加減で部屋に戻った。

”血?染めのタオル” に ”真珠”

シャワーを浴び、会議の資料をチェックして気付けば1時過ぎ、ハンガーに上着をかけようとキャビネットを開けたが中は空っぽ。
衣装棚かな?と、上段の引出しを引くと、中に入っていたのは一部が血のような赤に染まったタオル…?  

血染めのタオルが入っていた引出キャビネット

オヤジはとても臆病、普段その状況なら大声を上げていたはずだ。
心臓の鼓動は高まったが、酒が回っていたのか? 異国の地で感覚が麻痺していたのか? 今思い出しても不思議なほど落ち着いていた。
白い部分をつまむと指先に湿気を感じ、取り出すと、中から直径5mmほどの真珠のような玉がポロリとこぼれ落ちた。
もしや、事件か?」グルッと見渡すが、室内も浴槽も特に変わった様子は見受けられない。
ふと、目に留まったのがベッドの下、床との間に20cmほどの隙間がある。
恐る恐る覗いてみると、中になにかが見える。一瞬、ギョッとしたが、人体では無さそう、よく見るとベージュ色の毛布が丸めて置いてある。引っ張り出したが何も出てこなかった。
ホテルの片付け、清掃なんて目につかぬ所は適当なのかな?
タオルと毛布を風呂場に運び、真珠はティッシュに包んでゴミ箱に捨てた
一連の出来事に、消灯するのも気持ち悪く、明るいままベッドに横たわった

深夜に聞こえてくる音

ボロロン、ボロロン…」、目を閉じてしばらくすると、静寂の中に物音が聞こえてきた。
階下でピアノを弾いているような音、断続的に、時に旋律的に音を奏でている。
この時間にピアノを弾くものなどいようわけがない、どこから聞こえてくるのか?
加えて、時々、「コツコツ…」と誰かが廊下か階段を歩いているかのような音、神経が高ぶり一睡もすることなく朝を向かえた。

I trust you.

翌朝、フロントの年配女性に昨夜のことを伝えると、彼女はオヤジの顔をじッと見つめて、「I trust you. I trust you. (私はあなたを信じます)」と繰り返した。
このような場合、「ご迷惑おかけして大変申し訳ございません」とでも謝るものだが、「あなたを信じます」とは奇妙な返事だと感じつつ、後々、その理由がわかる。

幽霊ホテル

その日は、ミーティングが終わった後、夕刻からレセプション、ウェルカムディナーと続いた。一杯入っていい気分のところで、私の隣にいたDickという地元の同僚が待ちかねたように話し始めた。
「地元以外の皆さんは知らないかもしれないけど、ここは幽霊ホテルで常にランキングに入る知られたホテルなんだ。TVの人気番組、『ゴーストハンターズでも紹介されたことがあるんだよ。」
「このホテルができて間もない頃、ここで結婚式をあげた新郎新婦がいてね、スイートルームの1号室に宿泊していた。式に参加した人達に挨拶をするため、部屋を出て、階段を降りかけたところで新婦は足を踏み外して転倒、階段を転げ落ちて打ち所が悪く亡くなってしまった。それ以降、新婦の亡霊が、廊下や階段をコツコツとさまようようになったんだ。」

階段をさまよう新婦の亡霊(イメージ)
この階段を上がった正面にスィートルームの1号室がある

あまりにタイムリーなDickの話、オヤジの話をホテルから聞いておどかしているのかと思ったら、「一五いちごの話は今、初めて聞いた。あとでこのホテルの幽霊記事を送ってやるよ。」と、驚いている。

Dickが送ってくれた幽霊ホテルのリスト
赤のアンダーラインがLighthouse Inn

ニヤニヤ顔のウエイトレス達

そして、翌日のディナーの冒頭、オヤジの話を誰かに聞きたのか?
会議のホストから「一五いちご、君の体験を皆にシェアしてくれ」と指名された。
出席者全員、好奇の入り混じった表情でオヤジの話を聞いている。
ただ、気になったのがテーブルの周囲にいたウエイトレス達、オヤジの話を聞きながらニヤニヤしているように見えた。
3日間の会議の最終日、バーでたらふく飲んで部屋に戻り、一頃経ったころ、また聞こえてきた。「ボロロン、ボロロン…」あのピアノの音、そして、廊下の方から「コツコツ…」という音が

一連の出来事の最中、亡霊が現れ、オカルト現象が起きた…というわけではない。
オヤジが実際に見たものは赤く染まったタオルに真珠のような小さな玉だけ、聞こえてきたピアノの音やコツコツという音は、恐怖からの幻聴か?もしくはホテルの意図的な仕業か?

幽霊ホテルは人気

アメリカで幽霊ホテルは人気、その話題性でどこも賑わっているらしい。
このホテルも同じで、さまよう花嫁の亡霊を話題に食事を楽しむ人達で混みあっていると聞いた。
オヤジが体験した一連の出来事は、ホテルのさらなる話題作りのためにしくまれたものなのか🤔?
ウエイトレス達は事前にホテルのたくらみを知っていて、ほくそ笑んでいたのか🤔?
アジア人で気の弱そうなオヤジが格好のターゲットとして選ばれたのか🤔?
オヤジの話を聞いた地元の同僚達は知人、友人におもしろおかしく話すだろう。
話は広がり、さらにホテルは賑わうだろう。

だとすれば、オヤジはホテルのビジネスに多大な貢献をしたことになるのでは?
売上が増えたのであればいくらかの報酬をいただきたいな。
今となっては真実を知る由もない、ときたま、この出来事を思い出してはモヤモヤとする😔


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