夢酔藤山

ようこそ! 歴史時代小説を執筆しています。2024年は連載3本と単行本2本のお仕事です…

夢酔藤山

ようこそ! 歴史時代小説を執筆しています。2024年は連載3本と単行本2本のお仕事です(4月現在)。 講演・執筆のご依頼がございましたら、どうぞよろしくお願いします。 四方山のことは、こちらにも……! 散文小径 http://musuitouzan.blog.fc2.com/

最近の記事

  • 固定された記事

仕事依頼テンプレート

先に、ここね   ⇩ 自己紹介2000年「奇本太閤記」で第73回コスモス文学新人賞長編小説部門新人賞を受賞。以後、文筆へ。現在、「満洲-ここはお国を-(南信州新聞)」「真潮の河(房州日日新聞)」「千人同心がゆく(西多摩新聞※令和薫名義)」を連載中。 故遠山あき氏に縁深い文芸同人槇の会に所属。全国里見一族交流会理事、小山田信茂公顕彰会賛助会員をはじめ歴史研究会東京支部会員(H30年歴史大賞功労賞受賞)などに属す。 現在できること・やってみたいこと 2023年のオール読物新

    • 「箕輪の剣」第3話

      第3話 野盗退治  文悟丸の身支度のため、一夜の猶予が必要だった。  上泉秀綱一行は、ここ真勝寺に宿が設けられた。里見家には武芸に飢えた者が少なかったが、それでも数名、教えを求めて押し掛けてきた。その相手は、ふたりの供で十分だった。上泉秀綱は正木時茂とともに杯を交わし、北条との戦さのことを尋ねた。 「北条の狙いは武蔵国と安房上総である」  正木時茂は明言した。  安房上総を狙うのは、海を挟んで三浦半島に対峙するためだ。江戸湾の制海権を得る目的もある。しかし、里見の抵抗は、そ

      • 吉川英治記念館と『五月人形展』

        吉川英治記念館! 皐月の雨空のなか、青梅の山奥に行って参りました。 柚木の地から対岸に見えるは辛垣山。 三田氏の古城であり古戦場。 晴れた日に観たかった。

        • 「箕輪の剣」第2話

          第2話 剣と槍  上総国へは、武蔵国を横切らねばならない。河越野戦で関東管領上杉憲政が敗れて以来、北条の勢力は、じわじわと広がり、深谷あたりまで侵攻されていた。  武芸者として旅をすれば、傍目には浪人である。  北条の兵に咎められても、長野家の者と悟られねば長く留まることはない。それに、北条家も最前線に十分な兵を送り込んではいなかった。詰問は、体裁に過ぎない。 「先生。利根川を下れば、上総はすぐじゃありませんか」  若い供がいう。  その言葉に、上泉秀綱は笑った。 「儂に行

        • 固定された記事

        仕事依頼テンプレート

          「満洲」GWの物語は、空である

          南信州新聞連載作品「満洲-お国を何百里-」第5話は「空を飛ぶ女」。 この登場人物は実在しており、物語はフィクションではなく伝記にならない程度に史実を拾いながら、実際の生涯に肉付けするストーリーです。思えばフル創作の多かった本編で、8割方が史実に寄り添う一篇は初めてになるかも知れません。 松本キク。のちに結婚して西崎キクとなるこの女性は、連続テレビ小説「雲のじゅうたん」のモデルとされた女性パイロットの一人とされます。 埼玉県上里町。平成初頭、工場勤務で旧岡部町で働いていた夢

          「満洲」GWの物語は、空である

          「箕輪の剣」第1話

          あらすじ 上州の剣聖・上泉秀綱は、主君・長野業政の命令で里見義堯のいる久留里をめざす。業政の妹が義堯に嫁いで男子を生んだが病死・残された子が、里見に馴染まず箕輪へ戻すことになった。その迎えの役ではあるが、せっかくなので剣の技を磨いて来いという許しは、秀綱にとっても魅力であった。なによりも久留里の槍大膳こと正木時茂とは、一度は手合わせをしたかった。かくして上泉秀綱の旅が始まる。 第一話「上総久留里へ」    上総から養子を迎えるという報せ。 「はてな」  上泉武蔵守秀綱は、

          「箕輪の剣」第1話

          西郷男子部

          西郷隆盛といえば、男の世界。男が惚れる漢(おとこ)、体育会系な世界。例えるなら、幕末の薩摩隼人や二才(にせ)どもは、同じクラブの西郷先輩に憧れて暑苦しい汗を掻いた。そんな印象すらある。 そして若者は、いつの時代も過激を好む。 西郷吉之助と呼ばれた時代、温厚にして温和な人格像が感じられるのは、熱烈な西郷信者だった海音寺潮五郎氏の影響が大きいだろう。或いは司馬遼太郎氏の〈司馬史観〉かも知れない。が、温厚を強調しすぎた人格者のもとに、過激を好む若者が慕うのは道理に合わぬ。西郷とは、

          西郷男子部

          アルファポリス公開中の作品「小河内ムーンライト」。本日、作中にさらりと登場した人物、立河錦町楽天地の男・布施幸四郎。小道具ですが、実在の人で、有名歌手の父親。こういうところで時代背景を表現するのが夢酔流。だれのパパか分かるかな?

          アルファポリス公開中の作品「小河内ムーンライト」。本日、作中にさらりと登場した人物、立河錦町楽天地の男・布施幸四郎。小道具ですが、実在の人で、有名歌手の父親。こういうところで時代背景を表現するのが夢酔流。だれのパパか分かるかな?

          「悪代官様、御成りあそばせ」最終話

          最終話 悪代官様、ふぉぉえばあ 「のう。その方、その方じゃ」 「はあ?」  寡黙な与力が悪代官様に呼び止められたよ。 「その方は当家に伝えてどのくらいじゃ?」 「はぁ、たぶん、一〇年ほどかと」 「それでいて、ほんに冴えないのう」 「お互いさまに」 「アホウ。お前、何か取り柄はないんか?」 「はあ、むかし乗馬を、少々」 「馬にのるのは、今日日だれでもするわいな。もういい、下がれ」 「はぁ」  今日の悪代官様、なんだか機嫌が悪そうですね。  それもそのはず、そろそろ代官の任期が

          「悪代官様、御成りあそばせ」最終話

          「千人同心がゆく 北のまほろば」連載開始

          2024年4月26日(金)、先週完結した「千人同心がゆく」の特別編が連載開始となった。 日本から目と鼻の先にある国後島。 この未開の原野である蝦夷地に立った千人同心も、きっと同じ風景を目にしたことだろう。 開拓地は勇払(現在の苫小牧市)そして釧路に近い白糠が主な場所。しかしオホーツク側まで公的な役目で赴いていることが記録されている。 このときの開拓は、江戸基準で考えられた甘い認識故、不幸と甚大な被害が重なった。それでも北の大地に取り憑かれた男たちは、人生のすべてを開拓に捧げ

          「千人同心がゆく 北のまほろば」連載開始

          「悪代官様、御成りあそばせ」第5話

          第5話 悪代官様、ばいおれんす  その日、悪代官様のところ北町奉行様がやってきました。 「これは、これは。御奉行様自ら御出とは、どのようなお話でしょう?」  叩けば埃の出る悪代官様。なにかバレたかと、笑顔の奥では、ひやひやしていた御様子です。何せ、相当な悪ですからねぇ。 「のう、そなた」 「はい」 「いつだったか、儂がやったもの」 「短筒にござりますか」 「そなたはまだ持っておるか?」 「いぃえ。あのとき定町周りの殺し屋を撃ったとき、その場で処分してしまいましたが」 「そぅ

          「悪代官様、御成りあそばせ」第5話

          その作品をイメージする曲や歌はありますか?

          前回、「小河内ムーンライト」の作品テーマがジャズであり、グレン・ミラーの名曲「ムーンライトセレナーデ」をイメージにしたものという紹介をした。 全てという訳ではないが、作品の人物や世界を描くとき、イメージする役者さんをそこに投影することがある。同様に、この曲(もしくは歌)がピッタリというノリで描く小説もあるのだ。 実在した日本赤十字病院看護婦、第1回フローレンスナイチンゲール記章を受賞した、日本のナイチンゲールで、従来の看護婦の理想形を確立した戦前の人。 この作品を連載したと

          その作品をイメージする曲や歌はありますか?

          「悪代官様、御成りあそばせ」第4話

          第4話 悪代官様、ぴーちたいむ  最近憂鬱な悪代官様。桃の季節が終わってしまったようです。実は、桃が大好物みたいですね。 「誰も献上しないということは、いよいよ今年も桃の季節はおしまいかぁ」  すっかり気の抜けた悪代官様。黄金色の饅頭にもあまり関心がなさそうです。  それを聞いた恵比寿屋さん。色々と手を尽くしたのですが 「どうやら桃は、終わってしまった御様子」 と、代わりに持ってきたのは拐かしの町娘。せめて桃尻で我慢して欲しいという引っかけのようですが 「桃がいい。桃がなけ

          「悪代官様、御成りあそばせ」第4話

          音楽に寄り添う小説もある

          作品を読まれる方が 「この作品のイメージは……」 とチョイスすることがあるように、書き手にも脳内大演奏な印象ミュージックがあると思う。少なくとも、ワシにはある。 アルファポリスで発表している「小河内ムーンライト」。 これは、グレン・ミラーの名曲を全編の背骨にしたものである。 これを作品のなかに練り込んだ、和製ジャズが戦前日本から潰される少し前の、切ない時代の物語。 この作品の時代設定と、グレン・ミラーにちょっと詳しい方が作品を一瞥すれば、アレッという矛盾にすぐ気づく。気付

          音楽に寄り添う小説もある

          「悪代官様、御成りあそばせ」第3話

          第3話 悪代官様、まねぇげぇむ  布袋屋さんは手広く反物を扱っておりましてね、全国津々浦々の品物が御店に並んでおりますから、そりゃあもう、若い娘御からいぶし銀のとっつぉんまで、購買層は実に広いものでございます。しかも、安いお値段で提供しているものですから、本当に繁盛しております。  なにせ偽物ですから。 「これなに?黄八丈じゃないの?わたしが欲しいのは黄八丈なのよ」 というお目の高い方には、そっと裏の戸口からお招きして、本物を提供することもございます。それも格安ときたもんだ

          「悪代官様、御成りあそばせ」第3話

          リアル侍ジャイアンツ

          2022年、野球漫画の第一人者である水島新司氏が亡くなられた。もう2年にもなる。月日が経つのは、実に早い。 水島先生は実在選手を漫画に登場させた最後の漫画家かも知れません。なにせ今の野球漫画は架空のプロ球団や大リーグチーム、そこに所属する架空の選手を描くものばかりです。でも、昭和の人にとっては、やはり実在の選手と混在して主人公が活躍する野球漫画が、胸アツでした。「巨人の星」「侍ジャイアンツ」などは、読売巨人軍V9の頃を用いたもので、王さんや長嶋さんなどスター選手も多く、川上哲

          リアル侍ジャイアンツ