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「北越雪譜」を読む

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江戸時代後期の雪国の生活誌、鈴木牧之「北越雪譜」を、ゆっくり読んでいきます
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2023年10月の記事一覧

「北越雪譜」を読む:19

「北越雪譜」を読む:19

 越後縮は、越後国全体のものではなく、鈴木牧之の住む魚沼郡に限った名産品だ、という。

 着物を着る人がめっきり減った現代では、新潟の特産品といえば越後縮!と真っ先に挙げる人もまた減っているのだろう。
 越後縮の中でも、小千谷縮ならば知名度はグッと上がるだろうか。
 今は魚沼市、南魚沼市、小千谷市はそれぞれ別の市だが、江戸時代までは魚沼郡として同じ地域に含まれていた。

 越後縮は越後上布とも言い

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「北越雪譜」を読む:18

「北越雪譜」を読む:18

 以前にも少し書いたが、私の母は和裁を生業にしていた。
 大阪のある百貨店の呉服部に委託されて、お客さんが購入した反物を着物に仕立てるのが、母の仕事だった。

 父と結婚した頃、母は月に5枚ほども着物を仕上げれば、まだ若い父の給料を軽く超える収入があったそうだ。
 長襦袢や浴衣なら1日、袷の着物でも数日で縫い上げた。
 重い木の脚の上に戸板を再利用したと言う長い天板が載せられた背の低い作業台が、リ

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