白 曰く (2)

2007.

ただ言えることは、ボクは何も持たないし、
それでいて満ちている状態なんだ。
流動的で漂う数多の振動を選り分けながら、
整然と滞りなく連鎖している。

だけどキミらヒトっていうのは、何か持たないことには満足しない生き物じゃないか。
『持たない』ということは『持っている』の相対的な体験でしかないんだけどね。
『持たないこと』が『劣勢』や『不安』に直結するシステムを作り上げたのは大したものだよ

ほかの世界では、持っていても持っていなくても、ただの違いや個性でしかないところが多いのに。
そこに巧妙な仕組みで付加価値をつけたキミらの社会は、とても面白い構造だ。
黒が大いにお気に入りなのも頷けるね。

だからミンナ揺るがない安寧を求めてボクみたいな場所を目指すけれど、本心では肉体を持つ間に到達したいとは思っていないらしい。

いいんじゃないかな。
キミらヒトには、与えられている情報にまだ制限があるからね。
だって未だに自分の肉体さえ巧く使いこなせていないんだから。

天使か。………うーん。
よくさ、ボクらの眷族として名を語る存在がいるけど、あんまり気にしなくていいと思う。
優越感をくすぐるような、そういう勘違いをさせるやり方は、どっちかって言うと『黒側』が大好きな手法だよ。

敢えて『ボクら』と言うのはね、ここは層が厚いからなんだよ。
ボクは今、キミと会話をするために大分キミの振動数に近づいている。
その時点で、キミには人格を持ったボクという存在が認識されている。
でもこれは、ものごとを凄く凄ーく、大きく引き伸ばした状態なんだ。
かなり薄めた状態というかね。
ボクは割と密度が高いから、キミと直接は交流できない。
密度をキミと同じ状態にしたボクの分身が、今キミの言葉を借りてキミと会話している。
だからボクは白であるけれど、そのエッセンスの一部だと考えてほしい。

もちろんキミらのようなヒトに近い、個性を持った『白側』の存在も確かにある。
特にさまざまな世界と直接関わりあうのに適した状態を持つ意識帯の層だ。
個といってもキミらの想像するような個人的なものではなくて、層としてもっと合理的だし、計算高いよ。
おっと、誤解させちゃマズイな。
カレらがそういった個体としての感情を見せるのは、キミらがそれを求めているからだ…ってことにしておこう。

物質化している存在っていうのは、意識も強く、固定化しやすい。
強く固定された善悪の価値観を揺らすには、相対的な中で肉体を通しての体験をしないと、その認識自体を知覚できないからだ。
だからキミらの心に届きやすい振動数を振り撒いて、相対的な善を呼び起こすようなやり方をする。
黒側とのバランスが変わる時に、カレらを感じることがあるかもしれないね。
でも依存しちゃいけないよ。
カレらは非常に高潔で陽気だけど、容赦や慈悲ってものがないんだからね!

けれど、ボクらのような状態に近くなればなるほど、ヒトの個人的な生き方に直接干渉したりはしないんだ。
全体の流れをまるごと受け容れるのがボクらの場所であって、そこに特定の価値というものはない。

そりゃあね。
ボクらのエッセンスがその種の内側に働きかけることはあるけどね。
その時だって名を語るなんてことはしないよ。
ボクらは場所や空間、概念で認識されることは多いけれど、一人称的な名なんて持たないんだから。
だからね、だいたい第六感とか虫の知らせとか、直感、インスピレーションとかさ。
そういったキミらの中にある何かしらの霊感に情報を落とすよ。
うん。そういったことなら本当は常に起きているんだ。

キミらとボクらは一番深い根源的な場所で直結しているからね。
キミに情報を送り、その反応を記録し続けているよ。

ただ、それをどんな体験で知覚しようと、それはキミらの感性によるよね。
つまりは、どの感覚の可能性の扉を開くかってことだよ。
好みもあるし得意分野もあるだろう。

その扉の向こうに現れた存在を、天使と呼ぶのは正しい。
精霊とか、名のある神だとしても正しい。
同じ理屈で、それを悪魔と呼んでも妖怪と呼んでも正しいよ。
漠然とした、あるいは具体的なイメージかもしれない。
インスピレーションを現実化するのは受け手のエネルギーの使い方次第なんだよ。
信じる信じない、の問題じゃない。
ただ、どう受け取るのか、受け取りたいのかってだけだ。

肯定的に受け取るのであれば天使のような姿になるかもしれない。
否定的に受け取るのであれば、天使と逆のイメージを持つものを感じるということだ。

だからこれは超個人的な知覚であって、共有を強制する類のものじゃない。
今は、まだね。

エネルギーの振動数で、直感を信じれば雰囲気はわかると思うけれどね。
ただキミら、ヒトの思い込みの力はかなり強いから。
見ていると、その感覚を利用するよりも、利用される方が多いみたいだけど。






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