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仁義なき戦い 代理戦争(1973)

仁義なき戦い 代理戦争(1973、東映、102分)
●監督:深作欣二
●出演:菅原文太、小林旭、池玲子、堀越光恵、中村英子、渡瀬恒彦、山城新伍、金子信雄、木村俊恵、成田三樹夫、加藤武、田中邦衛、丹波哲郎、梅宮辰夫

アバンタイトルで前2作のおさらいをしつつ当時の東西冷戦の「代理戦争」を伝え、ストーリー開始3分でもう人が殺されている。

今作はまず武田明を演じる小林旭がカッコよすぎ!

どうしても日活のスターという印象があるからか、周りとはまた違ったオーラを発しているように感じる。

この時なんと35歳という衝撃。

そして今作のキーマンである打本組組長役に加藤武。

金田一耕助シリーズの等々力警部役のイメージが強くて一瞬誰だか分らなかった。

カッコよさなど微塵もない、小心者で利己的で器の小さい組長で、この人の保身と出世しか考えない仁義を無視した動きによって物語の展開が複雑になっていく。

それぞれがそれぞれの思惑で突き進む中で生まれる衝突、裏切り、悲劇…もちろん登場するのはヤクザたちだけど戦国時代の歴史小説に通ずるような面白さがある。

でもやっぱりカッコイイのは広能昌三(菅原文太)。

スクラップを女(池玲子)のために勝手に売った川谷拓三がその落とし前つけるのに手首ごと左手を切り落としたことに対して「クソバカ!」と怒鳴りつけながらも、ちゃんとした医者に見せとけ!と女にお金を渡す。

ケンカの果てに人を刺してしまった倉元(渡瀬恒彦)が、中学の先生に連れられて同じくその先生の教え子である広能の元に極道にしてやってくれと頼みこみに来るシーン(「教育者の先生がそんなこと言うたらいけんでしょうが」ってのが面白い)で、付き添いの母親には「極道なるゆうたらですよ、生みの親を捨てにゃあいけんのですけえ」と厳しく伝えるも、その直後帰ろうとする母親の横でボケっとしてる倉元に「下駄そろえてやらんかい!」、さらに「挨拶して送らんかい!」と突っ込む。

後半、そそのかされて一人暴走した倉元に対しその制裁でブチのめした後

今の時代はよ、相手をとりさえすりゃ勝てるゆう時代じゃあらせんので。のう。それさえわかってくれりゃそれでええ。

と諭す。

礼儀を重んじるという以前に優しい人なんだなあと思った。

明石組と神和会の系列の組同士の抗争が激化する場面をフラッシュ形式で映していく場面も最高。

大阪!奈良!京都!鳥取!福岡!
と、地図上の一点をギューンとズームアップし、縦横無尽に動き回るカメラでもって白昼堂々の殺しの場面を映していく。

小心者という意味では山守組長も同じだが、老獪かつ狡猾さ加減では打本よりも何枚も上手だ。

成田三樹夫に意見され、「わしゃ一人でもやるけん!」(って前も聞いたな…)からのウソ泣き演技、からの「飯食いに行こう」の流れが最高だし、おかみさんもその辺芸達者なので明石組に囲まれたと騒いで広能を呼び寄せて「頼りになるのはやっぱり昌ちゃんだけなんよ!」(これも前に聞いたことがある)と大げさに喚くシーンも最高。

ストーリー終盤、明石組が山守組幹部と打本との盃復活を迫る交渉の場面は緊張感が最大に達する。

いきなり停電になってろうそくを持ってこさせる展開となり雰囲気がガラッと変わる。

舞台における暗転のような、この演出が実にシビれる。


劇中夏の場面が多く、広能の元に先生と倉元が訪れる場面ではみんなスイカを食べている。

冒頭の大久保の家に広能が呼び出された場面ではグラスに入った白い飲み物をストローで飲んでる。

牛乳ってことはないからまさかカルピス?

菅原文太、小林旭、成田三樹夫の三人が喫茶店にいる場面でも成田三樹夫が手に持ってるグラスには白い飲み物とストロー。これもカルピス??

ストーリーや人物関係は複雑で、正直1回見ただけではよくわからないが、こういう細かいところも映画の世界にうまく入り込ませる仕掛けとなっていて本当に面白い。

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