徳川いれずみ師 責め地獄(1969)
徳川いれずみ師 責め地獄(1969、東映、96分)
●監督:石井輝男
●出演:橘ますみ、片山由美子、賀川雪絵、吉田輝雄
まずは挨拶がわりにとタイトルバックで処刑、鮮血、首切り。
大奥など時代劇という確実な下地をしっかり前フリとして利用していた感のある鈴木則文監督作に比べ、石井輝男監督の本作には日本の時代劇的な世界観とは違う、アングラ演劇的な雰囲気が漂っている。
与力の鮫島が笑っちゃうくらいの顔面白塗り。悪役なんですよ、ということを強調するかのような舞台的な演出だ。
売春宿、刺青を入れた女たちがズラリというのは壮観だけどそこにあるのはガラス天井とガラスの床。
さらにのぞき穴からもその女たちを品さだめする。
ガラス天井って江戸時代にはないだろ!と突っ込みつつも、監督のセンスが光るところ。
牢獄の中で囚人を17番、21番、みたいに番号呼びするのは多分ギャグ。そして大泉滉と由利徹が女囚役をやっている謎。
さらに声がアフレコで女に変えられている!本当にこの人たちはプロの役者だ。
製作年度は1969年。なので刺青の模様がもろにサイケ模様。
映画としては過去にさかのぼっていくようなやや複雑な作りになっていて、中盤になってようやく冒頭の墓場のシーンに戻ってくる。
石井輝男監督の脚本術として複数の作品を繋ぎ合わせることが明かされているが、そのため前後半でメインの人物が変わることになる。(前半:由美、後半:お鈴)
矛盾した言い方だがこの「分かりづらさ」がこの映画の魅力かもしれない。
とりあえず裸が出てれば大丈夫でしょってな感じで監督がかなり自由に撮っているという気がする。
東映のそれこそ任侠ものなんてほぼほぼストーリー展開同じ、いい意味でのマンネリズムがあるのに対してピンキーバイオレンスものにはそういった無軌道さがある。
この「分かりづらさ」をさらに過激にしていくとデヴィッド・リンチ的な魔境へと突入するのかもしれない。
映画の中では相変わらず注射器やらステンドグラスが出てきて、最終的には部屋の電気のスイッチオンオフみたいなシーンまであり、完全に江戸時代設定忘れていたんじゃないかという気さえしてくる。
異国感漂う出島の猥雑で迷宮的な雰囲気など、同じ石井輝男監督の『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』に通ずるものがある。
吉田輝夫が敵の娘を拉致して刺青を掘るために馬車で菜の花畑を駆け抜けるシーンなども良い。
ラスト、蛍光塗料刺青サイケデリックの衝撃。
なんだこりゃっ!としか言いようがありません。
最後は思い出したかのように残虐な股裂き処刑ショットで終わった。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?