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トラック野郎 御意見無用(1975)

トラック野郎 御意見無用(1975、東映、98分)
●監督:鈴木則文
●出演:菅原文太、愛川欽也、夏純子、中島ゆたか、佐藤允、春川ますみ、夏夕介

何か映画を観たいんだけどハズしたくはないし、かと言って肩肘張って真剣に見るんじゃなくて、気楽に楽しめる映画が観たいなという時に最適な、カツ丼的な映画。それが『トラック野郎』。

一番星の桃次郎(菅原文太)とやもめのジョナサン(愛川欽也)の二人のトラック野郎が主人公である。

冒頭は下関~東京、ストーリー上の主な舞台は盛岡・青森とその周辺。

序盤で、長旅運転から帰ってきたシーンが描かれるが、ジョナサンが貧乏所帯の大家族、女房の目を盗んでこっそりトイレでビール瓶を空ける姿と、一方で桃次郎はなじみのソープ(当時の言い方にするとトルコ風呂)の冷蔵庫で冷やしたビールを飲む。

似ているようで境遇は異なる二人のキャラクターが紹介される。

時代とは言え、煽り運転・危険運転なんてレベルじゃない、車道の真ん中にトラック止めて後続車を通れなくし荷台の上で殴り合いのけんかとか正気じゃない。

とにかく殴り合いやら喧嘩だのが多い映画である。

盛岡のドライブイン「くるまや」で働く洋子に恋した桃次郎がなぜか挙動不審になるのがベタで面白い。

「僕は今日、洋食…」からの
大盛りご飯にニラ炒めに豚汁一丁~!

の流れも面白かった。

それにしても最高なのは桃次郎とジョナサンの仲直りシーン。

些細な事(桃次郎が千吉を舎弟にし、ジョナサンよりも千吉とつるむことが多くなったことが発端)で大喧嘩をし、お互い会っても目も合わさず無視(小学生かっていう)していた二人。

そんなある日、海に一人、ふんどし一丁で立つ桃次郎にジョナサンが近づいていく。

何かを感じ取ったように二人は微笑みながら水をかけ合い、じゃれ合い、わだかまりも何もかもきれいに弾けて消えていってあっという間に元の二人に戻っていく。

言葉はいらない。

ふんどし姿のおじさん二人が海ではしゃぎ合いながら仲直りをするという、ある意味これも「映像の力」。


その直後、トラックの運転席に書き置きと共に捨て子が。

この捨て子をジョナサンが一人増えても変わらないと言って引き取るが、黒澤明『羅生門』を思い出した。

この女の子がテレビのねぶた祭りに反応したところをヒントにして、青森へ向かう。

何とも言えずホロリとさせる叙情的な場面になっているが、必要以上に湿っぽすぎないところがいい。

くだらない下ネタも多いが、娯楽作品としては最高です。

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