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『源氏物語』の記事へのコメントを書いていたら怪文書になったので、記事にしました

『源氏物語』が昔から好きで、現代語訳はいくつかと、関連書籍もいくつか、何年も前から楽しく読んでいます
先日、noteでフォローさせて頂いてる傘籤さんが、角田光代さんの現代語訳版の感想を書かれていて、源氏物語の現代語訳を読むのは初めて、という新鮮な切り口で、たっぷり源氏の世界を楽しんでいらっしゃる素敵な記事でした
(ファン歴の長さだけはある)古参の源氏物語好きとしては、すごく嬉しくなってしまう記事なんです!
ということで、色々とコメントの書き込みをしようとしたのですが…コメントって500文字しか入らなくて、どうしてもぶつ切りになってしまうのが気になり、いやそもそもそんなに書くなという突っ込みも、ごもっともなんですが、
どうしても『源氏物語』の話がしてえ…という気持ちが止まらないので、
この記事は、傘籤さんちの記事のコメントにいれる予定で書いてたら幅をとる分量になったので、自分ちの記事に持ってきて設置したものです
ですので、どなたでもお読み頂くのは、あまり適さない内容になっています その辺はご了承ください
傘籤さんの『源氏物語』感想記事はこちらです
古典文学を瑞々しく楽しみながら、愉快な【怪文書】がほっこりする面白さの、素敵な記事です!


〉傘籤さんへ
【怪文書】こと光君メモが大変面白くて大好きなので、それぞれにコメントを付けさせて頂きました
ちょっとめんどくさい長さなので、お気が向きましたらご覧ください


【桐壺】

桐壺の更衣が亡くなってから、わりと二転三転する序章ですよね、個人的には更衣の母と命婦の会話がねちねちした長さなのが凄く好きです
こきでん女御つおいwww 最高です!
変換困難名を容赦なくひらがなにしちゃうのいいっすね
そうですよね~かな文学ですもんね~ 
かりそめの間、弘徽殿女御ですら光る君を邪険にできなかった…のくだりは何か泣けてきます
そのあと藤壺に光君がめっちゃ懐いてしまうから! それを弘徽殿は不快に思っているの無理ないです
あと、藤壺の母君が弘徽殿の悪口をどストレートに言うのもいいですよね
(その後すぐ都合よく亡くなるのもセットで)

【箒木】

貴公子たちの“理想の女とは”論がまあまあ長いターンで、男性から女性への厚かましい望みがぼろぼろ出てくるので、人によっては挫折ポインツかも知んないですが、楽しんで頂けたでしょうか
あのあたりって紫式部がニヤニヤしながらノリノリで書いてたんじゃないかと思います
小君と光君の仲良しぶりも筆が乗ってますね、腐女子説ある紫式部ですから!

【空蝉】

終わり方の余韻が深いし、不思議な話ですね
登場人物がそれぞれ右往左往していて、それぞれの思惑がずれていくばかりで…哀しみも滑稽みもあって
そしてこの物語において、光君の能動的に求めた恋愛の初めての相手が、彼女だったのって凄いなと思います
執筆当時の読者層に一番近い女性像は、彼女だったのだろうと思いますし、しかも光君との駆け引きに勝利している、小気味良さが楽しいし当時の読者にも凄くウケた話なんだろうなと思ってます

【夕顔】

惟光の初登場ですけど、惟光いいですよね!
ちょいちょい辛辣だけど、頼りにもなる
大河ドラマの『光る君へ』にも味のある従者キャラがいるので、はっきり惟光の事を意識していると思います!
〉「この家の女房たちも、不安ではあったが、光君の気持ちがいい加減なものではないことだけはわかるので、だれとも知れないこの男を信頼しきっているのである。(P.141)」ええ……ダメだろどこの誰かわかんない男と……。

この件なんですが、
夕顔は頭中将の本妻(弘徽殿女御の妹)に睨まれ嫌がらせを受けて身を隠していました
ご実家もなく収入のあての無くなってる状態です
夕顔に仕える女房たちにとっては、新しい経済力のある夫に通ってきて欲しかったはず
だから、希望的観測で光君を信じたくて信じてる側面があるんではないかと思います そのくらい追い詰められた状態だった
そして歌を先に贈ったのは夕顔でした
夕顔は直感的に光君を源氏の君だと推量して歌を贈って、女房たちはその選択を、姫が選んだ男ならばと信じていたんではないでしょうか
女性から歌を詠みかけるのってわりと例がない(場合によっては、はしたない)行為だという説があります
女房たちと楽しそうに話していたという夕顔の様子って、改めて読むとしみじみしますね
たくさんの顔を持つ、魅惑的な女君です

【若紫】

国語の教科書に載っていることの多い帖ですね
少納言をはじめとした女房たちが、姫が無体なことをされるのではないかとバチバチに警戒していますが、光君の信用が無いんだなあということや、夕顔のくだりとの雰囲気の違いが面白いですよね
はっきりと姫君も女房も、いろんなのがいて、それぞれ違うってことが書いてありますね
そういう、キャラ分けを意識して登場人物の配置も気配りがあって、端役にも印象的な特徴を醸し出すところ、いいですよね

【末摘花】

「私はそんな移り気な人間ではない」は、本人は常に目の前の女君に一生懸命(なつもり)なんだと思います 良く言えば、天然なピュアなのかも
末摘花が頑張って贈ったであろう歌と正月の衣装が、凄くしょうもないもので、光君と女房さんが困惑しちゃうシーン好きなんですよね…胸が痛くなります

【紅葉賀】

光君の"ひかるくん"読み、すごくいいです!
こきでん女御のひらがな感と併せてめっちゃ源氏物語読解の大発明です!
藤壺の実家の三条宮で、紫の上の父親の兵部卿宮と対面した際には、お互いに“女にしてみたい”気持ちで美貌に見とれ合っててすごくハラハラしますね
源典侍の“おもしれー女”ぶりも良きですよね!

【花宴】

〉語り切らないことに趣があるということでせうか。

そうですよね! こんなに描写は濃密なのに、実は書かれてないこと、省略されたところって物語中にあちこちにあって、その先を想像…創造できる種はたくさん散布されてるからわくわくしますよね!
ところで、弘徽殿女御と藤壺が日替わりで帝の寝所に召されてる描写があったので、【桐壺】の頃と違ってすっかり帝はバランスとご機嫌取りのスキルを身に付けてるなあ~と、ちょっとほっこりします

【葵】

この帖で、桐壺帝が光君に、六条御息所への仕打ちが良くないとお説教するシーン好きですね
妃たちを平らかに、穏やかに、扱うようになった桐壺帝の変化がここでも垣間見える気がします
暦の博士は、方違え情報なども教えてくれる陰陽博士なんでしょうかね? 占い師+暦スケジュール管理のお仕事なのかも知れないです
事件のたくさんあった【葵】で、悲しいことや、やるせないことだらけでしたが、でもそうした描写にこそ、紫式部の筆致は冴え渡っていると感じます

【賢木】

〉すぐ出家したがるのよくない。よくないわ〜。

ほんとですよね、何だったらこの後とずっと出家したがってるままです、煮え切らない太郎の光君
仏教という教えが、現代の感覚よりも、当時の人にとっては心の支えだったのかも知れないですね
朧月夜との密会が実家バレするシーンは、光君に悪びれていなさすぎ賞をあげたいです

【花散里】

〉って短!短いなこの話。

ですよね! しかも花散里のところを訪ねたのって、たまたまというか、別の女にすげなくされて、そのまま帰るのも難だしって感じで、実はついでのついでくらいなんですよね…でも短いのに好きです

【須磨】

〉四季の変化を桜の花が散っていく様子で綴っていたり、月の満ち欠けで想像させたり、こういう部分に風情を感じますね

美しいですよね、光君の藤壺出家ロスのやけくそ行為で、こんなことになってんのに
でも、引っ越し準備の描写も細かくていいですよね
女君のおさらい+現状確認コーナーでもある
登場人物が多い物語では、必須のターンです

【明石】

〉紫式部って明石の浦とか住吉神社まで行ったことあるのかな。それとも伝聞とかでここら辺は描かれたことなのかな。気になる。

こちらはどうなんでしょうね、行っててもおかしくないけど、何となく自分の予想としては、出かけた先で見聞きした事を書くというよりは、世にある読み物や伝聞からイメージを煮詰めて書いていた人のように感じています
あるいは京を離れて地方で生活していた事がある人だから、ひなびたムードを書くのは得意な方なんだと思います

【澪標】

〉『ドラクエ5』を思い出した。『ドラクエ5』は源氏物語を参考にして作られた説。

ここ好きです! 予言がそのまま伏線となり、そうだったのか! と思える気持ちよさ!
それにしても、“伏線”っていう概念を、紫式部はどう知った(発明した?)のでしょうか?
今でも創作のお手本として使えそうなくらいの運用ですよね、ほんとすごい

【蓬生】

きらびやかな宮中での話など、まばゆいお話も良いですが、のっぴきならない貧乏の描写も、楽しく読めますよね!
末摘花かわいいですよね、これまでの生き方や価値観を変えられない(そういう発想がない)人って今でも少なからず居ます
そういう人が報われないと、ほんとに辛いし悲しい
ご都合主義じゃなくて、ちゃんと光君がそんな末摘花に心を寄せるのがいいですね

【関屋】

たまにある、とても短いのに素敵な味わい帖いいですよね

【絵合】

〉頭中将の娘である方のこきでん女御のことはファンの間ではどう区別して読んでるのかしら。便宜的に大こきでん、小こきでんとでも呼び分けようか。

大こきでんと、小こきでん、大発明すぎます!
思うに、源氏物語ファンの間では、同じ呼び名で別人、という描写程度に何だよ! 解るだろう? ビビってんじゃねえよ!(意訳)という扱いになってるように思います

それと、絵合せ会いいですよね、読書会と平行してやってみたいです どの絵にする~? どの本にする~? で無限に話せそう

【松風】

〉母の身分で格が決まるから、姫君のためにはその方がいいという考え方なのか……。なるほど世知辛いなあ。

光君自身も、“更衣腹の皇子”だったから、娘を入内させるにあたり、“国母となる娘” にひとつでも瑕疵がないようにしたいんですよね
冷徹な政治家の判断を、娘を可愛がりながらする光君は、恋に明け暮れていた頃よりも魅力的に感じます

【薄雲】

〉「入り日さす峰にたなびく薄雲はもの思ふ袖に色やまがへる」←なんか心に残った和歌。

重い存在のヒロインの退場が、切なく無常感にあふるる描写がされますが、それより僧都がほんとろくなことしねーなって思っちゃいますよね、面白いけど
父を慕いたい帝もまた、切ないですね

【朝顔】

しっとりとした(あるいは粘着質な)大人の恋愛のようにも読めますが、これって前の帖で藤壺が居なくなってしまったから、少しやけくそになって昔の恋にのめり込んでいるようにも見えるんですよね【葵】のあとの【賢木】の時みたいに
もう大人しくしとけって思うけど、でも光君はこうでねえとな! という気持ちもあります

〉この話も好きだなー。光君になびかない朝顔が新鮮だし、彼がこれまで出会った数々の女性について想いを馳せていて。

そうなんです、それはそれとして、朝顔斎院が揺るぎない頑固さんでいいですよね
しかし紫の上を相手にして過去の女君を回想してるのは頂けませんね 紫の上は自分を軽んじているのかって思ってたけど、残念ながらその通りだと思います

【少女】

ゲームっぽい言い方をすると、子世代の物語が始まって、生まれた時から知ってる子が立派に成長していたり、少年の頃から知っている男子がいっぱしの父親になっていたりと、たくさん感慨深い帖ですね

〉やあやあ、大こきでんの登場だ。

年取って性格悪くなったって書かれ方が辛辣ですよね…
光君を政治の舞台から追いやるのに失敗した、悔しい、ってはっきり考えてるところは、やはり自分は好きですね
ほんと、異世界転生して弘徽殿大后になって、どうにかして光君を政治的に叩きのめしたいです

〉好きな姫君は夕顔、好きな帖は【朝顔】

傘籤さんの推しが聞けてうれしいです!
でもまだまだ暫定ですよね、ぜひまた『源氏物語』感想をお聞かせください!

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