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「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」感想

話題の書籍,三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか(以下本書)』を読みました。

この本は、いくつかの「概念」が共感を読んでいるからこそ売れているのではないか、と思います。この本で書かれている「概念」をいくつか紹介し、この本の魅力や意義を考察したいと思います。

この記事は内容の紹介は含まず、本を読んだ人向けに書いています。ただし、未読の方でも読める内容になっています。また、私なりのまとめ方をしていて、本の内容と齟齬がある部分もあるかもしれませんがご了承ください。

「半身」で働く


この本の一番重要な概念です。三宅さんは、まず従来、日本では長時間労働に代表されるように仕事の全てに体力や精神力を注ぐような働き方を「全身全霊」とよびます。

「全身全霊」はバーンアウトやうつ病などのリスクもあり、平日に読書などの余暇を楽しむ余裕がない働き方です。

三宅さんが推奨する働き方は、「半身」です。具体的には週3日労働などの仕事に「全振り」しないような働き方を指しています。

文脈

半身で働くことで、仕事以外のやりたいことに時間を使えるようになります。三宅さんはこのメリットを仕事以外の「文脈」に触れられることだと言います。

仕事では業務に関係のある情報しか入らなくなり、人間関係も閉じがちです。すると、自分の関心も狭まっていきます。

余暇は仕事の利害関係を超えた情報や人間関係、世界の動向に触れられます。こうしたさまざまな文脈に触れることで、自分の関心も広がるでしょう。これは仕事にとっても有益です。

ノイズ

三宅さんが読書のメリットとしてあげるのは、「ノイズ」に触れられるという点です。ノイズとは、自分の知りたかった情報や自分の関心とは外れた情報のことです。

ノイズは自分の文脈を複雑にする効果があります。読書はインターネットでの情報検索とは違いノイズに触れて、文脈を複雑にする効果があります。

半身への批判

三宅さんの本への批判として、「半身」という働き方が現実ではない、というものがあります。現実的に週3日労働などを採用している会社は少ないです。さらに、このような働き方をすれば所得などが下がるリスクもあります。

文脈と身体

私もこうした批判は的をいていると思います。ただし、本書が重要なのは働き方の問題に「文脈」という概念を登場させたことでしょう。

仕事に関する情報しか触れないと物の見方は確実に狭くなっていくと思います。一方で現実の問題は複雑です。仕事上でもたとえばITなどの自分が知らない分野の知識が突然必要になることはよくあります。

複数の文脈に触れることは、現実の複雑な問題に対処する上でも重要なのではないでしょうか。さまざま文脈に触れ続けるにはどうすればいいのか、考え続ける必要性を感じました。


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