アドラー心理学を生かした叱り方

小学校にいると、叱り方は十人十色だなあと思う。
大きな声で叱る、パワフルな先生。
熱く語りかけるように叱る、カリスマ的な先生。
辛辣な言い方で叱る、厳しい先生。
叱り方は様々だが、どの先生も子どものことを真剣に思っている。

ところが、「叱らない」をモットーにしている先生に出会った。その先生は、アドラー心理学を勉強して、「叱っても意味がない」という考えに至ったそうだ。
私は叱ることが得意ではないため、叱らない指導法があるならば、ぜひ実践したいと考え、勉強することにした。

アドラー心理学の考え方

なぜ叱っても効果がないのか

『幸せになる勇気』(岸見一郎、古賀史健著)によると、アドラー心理学では、子どもの不適切な行動を、五つの段階に分けている。

①賞賛の要求
 褒めてもらうために、いい子を演じる。
②注目喚起
 いたずらをしたり、できない子として振る舞ったりして、注目を集めようとする。
③権力争い
 反抗や不服従によって挑発を繰り返す。
④復讐
 ひたすら相手が嫌がることを繰り返す。
⑤無能の証明
 自分がいかに無能であるかを、あらゆる手段で証明しようとする。

これらの行動はすべて、教室の中で居場所を確保するために行われる。
よって、教師が②~⑤の行動を叱ることは、子どもの目的を果たしてあげることになり、逆効果なのだという。

叱らずにどう指導するのか

『アドラー心理学で変わる学級経営』(赤坂真二著)によると、子どもの不適切な行動を指導する際には、次の3点が重要である。

・子どもの不適切な行動に対しては、注目しない。(叱らない)
・子どもの不適切な行動の中から、適切な行動を見つける。
・勇気づける。

また、子どもと関わるうえで、次の2点が大切であるという。

・原因を追究するのではなく、目的論に立つ。
・尊敬の念をもって子どもと接する。

よって、これらの5点を意識して、「叱らない」指導を実践していくことにした。

実践

実践できたこと

休み時間に友達とケンカになったA。
これまでもAは、友達と何度かトラブルがあり、その都度、下のような指導を繰り返してきた。

私「どうしてそんなことしたの?」
A「……」
私「〇〇さんどんな気持ちになったと思う?」
A「……」

私は、Aから話を聞きだすことができず、一方的に叱っていた。そのため、指導後もAの変容は見られなかった。
そんなAに、今回は、アドラー心理学を生かして指導することにした。

私「何があったの?*¹」
A「氷おにで、助けてって言ったのに、Bが助けに来てくれなかったから、『友達やめる』って言った」
私「そっか、助けにきてほしかったんだね」
私「でも、私は、これからもみんなと楽しく遊びたいなら、もっと優しい言い方をした方がいいと思うよ。*²」
私「どうかな、これからみんなと楽しく遊びたい?それとも、遊ぶたびにケンカして嫌な気持ちになりたい?*³」
A「……楽しく遊びたい」
私「そうなんだね。じゃあ、代わりに何て言えばよかったかな。*³」

*¹原因を追究しない。
*²アイメッセージを使う。
*³勇気づける。

アドラー心理学を生かした結果、Aは、これまでよりもかなり心を開いて話してくれた。特に、「何があったの?」という聞き方は、子どもが打ち明けやすいと思った。また、Aの話を一旦受け止めたことで、Aもこちらの話も聞こうとしている様子だった。
アドラー心理学を生かすことで、よりよい指導ができると実感した。

実践できなかったこと

一方で授業中は、どうしても子どもの不適切な行動に注目してしまった。
突然歌い出す子。反抗する子。ふてくされる子。
叱ってはいけないと思いながらも、結局叱ってしまった。

私は、叱ることが得意ではないという理由から、叱らない指導について勉強した。しかし、叱らない指導は、叱る指導よりも、ずっと難しかった。

これから

アドラー心理学を取り入れようと試みて一週間。
実践できたこともあれば、できなかったこともあったが、Aの変容を見ることができたのは嬉しかった。
そのため、もうしばらく実践を続けていき、子どもや自分自身に変容があるかどうか見ていきたい。
そして、最終的には、アドラー心理学のよい部分を生かしながら、自分なりの叱り方を見つけていきたい。


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