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小説:剣と弓と本

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セド、ナスノ、ライが「冒険」をするお話。2024/05/26第一部完。さて第二部は?
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2024年4月の記事一覧

小説:剣・弓・本021「蟻と斧」

小説:剣・弓・本021「蟻と斧」

【ライ】

「あ、ネネちゃんも行ってしまいましたね」とナスノさんはフラットに言います。
「単純な移動速度だけなら、セドさんにひけをとらないでしょうし、あと……」
「あと?」
「あ、いや、いえ……なんでも無いです」
 “ネネさんはナスノさんとそりが合わず、セドさんと一緒にいるのが一番だ”という件については言いませんでした。そんなことを言ったら、ナーバスなナスノさんが更に面倒臭いことになって大変ですか

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小説:剣・弓・本020「美と狂気」

小説:剣・弓・本020「美と狂気」

【セド】
「なあ、ライ、あとどれだけ歩きゃいいんだ」とボヤくと、
「おかしいですね。事前の調査では睡りの塔にはもう着いていてもいいはずです」とライが片眼鏡をいじりながら語る。
「何か、睡りの塔、遠ざかってねぇか」
「確かにそんな風にも感じられますが」ライは冷静だ。

 ナスノが目を見開いて、
「もしかして、これが精神系攻撃……」と力強く、かつ小声でつぶやいた。かと思うといつもの調子になり、
「嗚呼

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小説:剣・弓・本019「黄色と赤色」

小説:剣・弓・本019「黄色と赤色」

前話

019
【ライ】

「ナスノさん、あの黄色い岩、見えます?」
 首をそちらに向け、髪をかき上げ目を凝らします。
「あれに当てられますか」と僕は伝えました。
「???……理由はあとで伺いますよっと!」
 いつもの如く長い脚を踏み出し身体を弓のようにしならせて投擲しました。
 戦場では一瞬の遅れが命取り。セドさん同様、ナスノさんも熟知している様子です。
 矢はその黄色い岩に命中。粉々に砕け散る

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小説:剣・弓・本018「急襲」

小説:剣・弓・本018「急襲」

【セド】

 睡りの塔へ向かう俺たち。隊列としては前から俺、ネネ、そして少し距離を置いてライ、ナスノだ。もちろんライの提案による。
 森林地帯(と言っても静かの森ほど密ではないが)を抜けると草原が広がっており、地平線の先にはうっすらと塔らしきものが見えてきた。
「おお、あれが睡りの塔ですね。なかなかに美しい姿ではありませんか。私たちを手招きしてくれているのかもしれませんね。到着したらお土産を渡しま

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