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職人業界を変えたい、大工見習い。_あたらしい道具プロジェクト1

「職人業界を変えたい!」と考え、閉鎖的な職人業界にアタックを続ける大工見習いの方とお仕事を始めました。

強い思いを持ちながらも、実現するために何をしていいかわからない。色々と試しているが、前に進んでいる実感がない。そういった悩みを抱えていました。

なので、1から一緒に考えることから始めました。

まず最初にヒアリングによって思考の現在地を把握することから始めました。
それは、動機と背景、そして何を試してきて何を発見したのか、の整理と意味の再発見を行う事で、クライアントの思考に追いつくためです。

●クライアントの事前メモ

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これらのメモをもとにヒアリングを行うことで、思考の現在地を以下のように整理しました。

●活動の背景と趣旨の整理

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彼は工務店の生まれで幼い頃から職人達に囲まれて育ったため、自然とその人たちのことが好きになりました。自らも大学でデザインを学んだ後に、大工職人として修行を始めましたそうです。
大学時代のあいだに3Dプリンタなどのデジタルファブリケーションの急速な発達や、ユーチューブ等で職人ノウハウがオープン化される等、時代の大きな変化を体験します。
そのため、大工修行をはじめて楽しさを感じる反面、昔から変わらず腕一本に頼り新しいものに興味を持たない閉鎖的な業界に、危機感を感じていたそうです。

時代の変化に対して、あまりにも無防備な職人業界。閉鎖的な気質が強い上に、自身の技術に絶対の自信を持つため外の世界に興味が薄い。若い職人は変化に敏感だが、ベテランになればなるほど鈍感になっている。高齢の職人は変化から逃げ切ることができるが、中堅職人は逃げ切ることができず、変化に適応することもできない。このままでは、自分の好きな職人達がやばいんじゃないか。

そうした思いが、「職人業界を変えたい!」と考えるきっかけだったそうです。

●2つの領域の行き来による職能の抽象化

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彼は、大工修行の傍らで個人のデザイン活動も行なっていました。大学時代の友人とともにプロダクトデザイン等を行なっていたそうです。
1つの領域に没頭している人は盲目的になりがちです。特に大工になりたての彼は覚えることも多く、また楽しさと自身の性格ゆえにその傾向が強い。そこで、大工修行とデザインの2つの領域を往復によって思考を切り替え、強制的に客観的な視点を得る仕組みを作りました。
これまで学んできたデザインを大工修行にいかし、大工修行の成果をデザインにいかす。この2つの領域の往復により職能や業界を抽象化し、時代の変化に対して職人が抱える課題と可能性を発見しました。

●抽象化を経て発見した指標

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ヒアリングから浮上した「発見した可能性」を元に、「現在の職人」が持つ課題点と、未来の職人像の「指標」を整理した図です。
彼が職人に求めるものは非常に明確で、「横断性」「継承性」「間接的(仮)」の3つに絞ることができました。これらは以下の想いと結びついています。

「横断性」・・・現状は閉鎖的。他の領域と積極的に結びつくことに新しい可能性がある。
「継承性」・・・先人達が積み重ねきた技術の知を、未来へと繋ぎたい。
「間接的(仮)」・・・技術のための技術ではなく、新しい価値を生むための技術でありたい。

その逆に、職人として変わってはいけない部分には「技術力」が明確に挙げられました。
これらを元に、新しい職人像について議論を行いました。

●新しい活動領域を作る上で職人に求める進化

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真ん中の小さな三角が、これまでの職人像の図式です。
◯「好き」という思い
◯妥協しない「信念」
◯仕事に向き合い続ける「体力」
これら3つと、真ん中に「技術力」を持った人が職人でした。

彼が思う未来の職人像はこれらを否定せず、「横断性」「継承性」「間接的(仮)」を加ええて生まれる、大きな三角形です。

●今後の展開

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今後の課題として、「新しい環境の発見」を提案しました。
今回の成果はこれまでの活動を整理し、動機と新しい職人像を発見し仮説をたてるられた事です。
今後は1つステップアップし、どのような環境を作れば目的を達成できるのか、という新しい問いの答えを考えていくことになります。


続きは次のnoteに。


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