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みかん

 みかんは、いちばん親しみ深いくだものです。「お」をつけて「おみかん」と呼びたくなるのですから。
 たとえば、りんごやぶどう、バナナも身近だし、おいしい。でも、ふとアダムとイブや、美術館の静物画が思い出されたり。ワイナリーの広大な畑や、あのCDジャケットが浮かんだり。ちょっと、かっこよすぎるのです。苺は、アイドルみたいなあの子。さくらんぼは赤い口紅のお姉さん。桃はチャイナ服のセクシーなガール。あんまり気軽には、近づけないのです。
 みかんは、こたつの上に猫とともにあり、給食にも冷凍されて、出てくる。手のひらにすっぽりとおさまり、あれよあれよと、サッパリと、皮はむけてしまう。ストーブの灯油が燃える音を聞きながら、新しい手帳の一ページ目を丁寧に開きながら、何個でも食べられる。うちにきて、なんか食べていけば、みたいな。ともだちみたいな。そんなくだもの。

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お正月の一週間、たべものエッセイ
1月4日 / みかん

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