「あいつ結婚してつまんなくなった」言説について
「あの人結婚したら守りに入ってなんかつまんなくなったよね」的な言説、どこかで聞いたことがある人も多いと思う。
私も聞いたことある。てか言ってた。バリバリ言ったことある。陰口として。
いま思えば失礼極まりない&浅はか発言すぎて、可能であれば己を殴りに時を戻りたいわけだが、実際自分が結婚してみて「当たらずとも遠からず」 な部分もあると思ったりもする。
自分が「結婚してつまんなくなった」とは思わないけど、発言が変わった自覚はあるからだ。
まず、結婚する前の自分のSNSやブログでの言動は、「だれかに聞いてほしい」「私に気づいてほしい」という気持ちがよく表れていた気がする。
気づけばいつも「反応してほしい誰か」の顔がうっすら浮かぶ発言をしていた。この話したらこの人反応してくれるかな、みたいな。
ゆえに他者に引っ掛かりそうな強めのワード選定や極端な言い切りもあまり躊躇なくできていたのだろう。
当時は認めたくなかったけど寂しい気持ちもあったと思う。結婚したら寂しくなくなるというわけではないけど、話を誰かに聞いてほしいという寂しさ。
それを「承認欲求乙w」と冷笑したいとは全く思わない。あの頃の自分の気持ちを無下にしたくはないし、ちょくちょくバズったおかげで多少は良い思いもした。バズったからといって寂しさがなくなるわけではないということも知った。
変わって現在。まず「誰かに聞いてほしい」と思う話はだいたい夫との雑談で完結してしまうようになったし、いつでも自分に気づいて反応してくれる相手=夫がいるために「他者からの反応」を外に求めなくなってしまった。
これは結婚そのものがどうこうというよりは「よく雑談する相手と生活を共にするようになった結果」ということだろう。
さらに「私が変な発言でめちゃくちゃ炎上して、本名と住所が晒されたら夫も被害を被る」ということが発言をマイルドにさせている気もする。
結婚してようがしてまいが炎上するようなことを言うなという話なのだが、炎上やトラブルが自分だけの問題ではなくなると、いちいち「これは言って大丈夫なのか…?」「これはマウンティングなのでは…?」とブレーキを踏むようになり、SNSも下書きだけがどんどん溜まって、だんだんROM専に近づいていっている。昔は毎日なにかしらツイートしてたのに。
要は寂しさからくる激しめの発言がなくなったということだ。
そんなわけで「結婚するとつまんなくなる」の実態ってこういうことだったのね、と実感する今日このごろなのだが、そもそもこの言説でいう「おもしろい」「つまらん」の軸もたいがい浅はかである。
耳目を集めやすくて、ちょっと雑で失礼で、無茶で、切れ味鋭いけど他者も傷つけうる、あぶなっかしい発言を「おもしろい」ものとして、そういうカードが切れなくなると「つまんない」扱いというのは、なんか違うんじゃないか?
もちろん「おもしろい独身」が全員そうだという話ではなくて、「あいつ結婚してつまんなくなった」と言われる際の「面白さ」「つまらなさ」は、そういう無軌道な物言いができるか否かにフォーカスが当たっている、ということだ。
「それは違う」と言いたい。
たしかに「寂しさ」や「誰かに見つけてほしい」という気持ちは大きなエンジンになるし、実際そういうエンジンで書かれためちゃくちゃ面白い話とかもあったりして個人的にはかなり好きだ。
でも違うエンジンだってあるはずなのだ。
私はいままで「寂しさ」や「誰かに見つけてほしい」気持ちを燃料にしてきたから、それらが一旦満たされたことであまりものを言うモチベーションがなくなって来ている。これからなにか書いたり言ったりするには別のエンジンが必要になることも薄々感じている。それがどんなエンジンなのかはまだわからない。
いや、今後めちゃくちゃ夫婦仲が悪くなって再び寂しさエンジンロードに舞い戻る可能性だって無くはないけどね。全然。夫に愛想つかされるかもしれないし。
でももしその「別のエンジン」が、これまでの寂しさエンジン、いわゆる「look at me」的なものから「look at us」的なものに変われたとしたら、すごくいいなと思う。私を見つけて!が満たされたら、誰かと一緒に上がっていける方へ。という変化。
……なんて達観するには早い? もうちょっとじたばたした方が良い? ちょっと結婚したからって満たされた気になるなよな、というのもわかります。
結婚は必ず人が満たされる機能があるわけじゃ全然ないし、人はどうなろうと孤独であるということもわかるし、そもそも結婚数年目でわかったように語るなというのもわかる。
どちらにせよ、寂しさ以外のエンジンでいろんなことをおもしろく話せるようになって、「あいつ結婚してつまんなくなったね」なんて言われないようになりたいと思うのでありました。
いやそもそも言われてんのかしらんけど!
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