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パターン青、生理です

人類のだいたい半分は「生理が来る側」の人間だ。半分の人間は毎月股から血を流しているか、これから流すフェーズになるキッズか、流すフェーズが終わった先輩に分類される(ざっくり)。

生理が来ている(血が出ている)日数を合計すると、平均で7年間になるらしい。人類の半分は、一生のうちの7年間分の時間、股から血を流しているのがこの世の真実である。

けれど、そんなことなかったかのように、血を流しているなどと察されないように、こっそり対処して暮らしている人がほとんどなのもこの世の真実だ。

ナプキンをうっかり忘れたら、女同士で麻薬の取り引きのようにこっそり「ブツ」を譲渡する。

服やシーツを血染めにしてしまうことも実は結構よくある話だが、そんなときは誰にも見つからないようにひっそり洗ったり、ユニクロに駆け込んだりしてそんなトラブルは無かったかのように振る舞うので、「血で汚して困っちゃった」人を見かけることはめったにないと思う。


人類の半分は、毎月このような隠密活動じみたことをして、生理やそれにともなうトラブルを乗り切っている。


私も「来る側の人」なのでその例に漏れず、毎月来たものに黙って耐え、トラブルにこっそり対処し、嵐が去るのを待つ暮らしをしていた。

私はPMS(生理前症候群のこと。ホルモンバランスの変化によって心身に不調が出る)が重めの貧血持ち、生理中は頭と腰が痛くなるタイプで、とくにPMSのせいで過食気味になったりやる気が一切出なくなったりするのに悩まされていた。

生理が近づくと、仕事や勉強の意欲が一切湧かないくせに食欲だけは無駄に湧く。その結果、終わっていないタスクと増えた体重が残るのでかなり死にたい。大げさな、と思うかもしれないが本当に死にたい気持ちになるのがPMSの怖いところだ。毎月怪獣が私をひっつかみ、フジヤマなみに振り回して強制的にメンタルが乱高下させられているような感覚である。めっちゃ迷惑だ。いまいましいったらない。


数年前、私はそんな毎月の怪獣による暴挙にほとほと疲れてしまって、なんとか対処する手を模索するようになった。私を乱高下させる怪獣を少しでも鎮めたい。ゴジラにはヤシオリ作戦、使徒にはヤシマ作戦。生理には何作戦か?

学校で教わる対処法は「生理が来たらナプキンあててあったかくしてろ」くらいなもんである。

どうやら、対PMS策としてピルを処方してもらうことができると知り、婦人科へ行った。思いのほかサクッと処方してもらえたので拍子抜けしたのを覚えているが、かくして私vs生理の「ピル作戦」が始まった。(低用量ピルは避妊目的だけではなく、PMSのホルモン療法にもよく用いられるのだ)

結果として、私の場合この作戦がかなり効いた。何回かピルの種類を変えたりしたものの、PMSはかなり改善され、「フジヤマ怪獣バースト」が「ブランコ強め漕ぎ」くらいまでにはマシになったのである。人類の快挙だ。絶対に抗えないと思っていた「生理」を幾分か自分のコントロール下に置けるようになった感動がじわじわ込み上げてきた。


それ以来、私はさらに生理を快適に過ごす方法を模索するようになった。一度「コントロール感」を覚えてから、迫りくる使徒にあの手この手を試してみたくなったのだ。触り心地のよさそうな下着、素材にこだわっている生理用品、「命の母ホワイト」をはじめとした「飲む系」のアイテム。

使徒が来るなら迎え撃たねばだし、座して死を待つのみではむなしい。工夫して対処して、少しでも自分の心身をコントロールできている実感がストレスの軽減につながっていった。

そんな風にいろいろ試し始めると「今月はこれで迎え撃つ」みたいな気持ちになってくるので、新しいアイテムをどんどん試したくなってくる。幸い、最近は第3次生理ブームと言われているように、あちこちで革新的な生理用品が売られているので、いろいろ試すには生理が月一では足りないくらいだ(変な言い方だけど)。

ちなみに、いま私が気になっているアイテムは「月経カップ」 と「ムーンパンツ」である。どちらも、新聞紙を股に当てて対処していた時代(そう遠くない昔のことだけどね)の人が泣いて喜ぶような発明品だ。試してみない手はない。気になる人は調べてみてほしい。


もちろん、生理はほんとに個人差があるものだし、それぞれに合った対処法があるので「全員ピル飲んでニューウェポンを使え!」とは全然思ってないのだが、いろいろ選択肢が増えてきているので試してみるのめっちゃいいよ!という話だ。

現状ほとんどの人がナプキンオンリーで使徒と戦っていて、「タンポン使ったことない」「ピルって怖くない?大丈夫なの?」という話をかなり聞く。せっかく汎用人型決戦兵器が開発されているのにN2爆雷だけで使徒と戦おうとするのはもったいない。どうせ毎月めんどくさいのだから、やれるだけいろいろ試して抵抗していけたらいい。やられっぱなしで辛いだけなの嫌じゃん。

最近知ったことなのだが、昔の人は出産が多く妊娠期間が長かったり、発育度合いが今と違うこともあって一生のうちの生理の回数がかなり少なかったらしい。江戸時代の人が一生に50回程度だったのに対し、今はなんとおよそ450回。450回も使徒と戦わなきゃいけないなら武器はいろいろあるに越したことはない。


ということで、私は今月も新たなアイテムを試してみようと作戦を立てている。前までこっそりひっそり対処していた生理中の隠密活動が、ちょっと勇敢な、ひそやかなチャレンジに少しずつ変わってきている。

生理についておおっぴらに語るのは嫌な人も、自分の場合はどう対処するのがベターなのか、自分と対話してみるのはおすすめだ。心にミサトさんを飼って状況報告したり指示を仰いだりしてみてほしい。それが、自分の体を観察して健康を管理することにつながるのだと思う。

よさげなアイテムがあったら、おおっぴらでもこっそりでも教えてくれたら嬉しい。私じゃなくても友達とかに。

それでは、みんなの今月の作戦がうまくいくことを祈る。

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