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財布の中にはいくら入っていますか
先日、買いたいものがあり、子供たちは夫にみてもらって一人出かけたときのこと。お店の中で時間をかけて商品を入念に選び、これでよし、とレジへ向かった。すると、レジの人が、
「現金のみでお願いします。」
と言う。
「え…?現金?」
一瞬、固まってしまった。そういえば、このお店は現金のみだとどこかに書いてあったな。嫌な予感がしながら、慌てて財布の中を探ってみたが、どこにも一円も入っていない。いや、一セントも入っていない。(ここはアメリカです。)
アメリカでは、飲み物一つ買うにもカードで支払うのが普通で、日本ほど現金のやりとりをすることは多くない。コロナ禍においては特に、感染のリスクを避ける観点から、現金での支払いはめっきり見かけなくなった。私自身、最後にドル札を見たのはいつだろう…というレベルである。
以前は、念のため少しは現金を財布の奥に忍ばせておくようにしていたが、最近はお金を使うのはスーパーくらいで、カードを複数持っておけば困ることはまずない。いつか現金を使ってしまったきり、補充することをすっかり忘れていた。というか、現金を持ち歩く必要性を感じなくなっていた。
しかし、この時はわざわざ車で30分もかけて出掛けたのだ。みすみす諦めてなるものか。すぐ戻ってきますから、と言い残し、商品は一旦取りおいてもらい、お金を下ろしにいくことにした。
アメリカでは、スーパーのレジで現金を下ろすことができる。買い物の支払いをカード決済することが前提だが、下ろしたい現金の額を上乗せして決済し、上乗せした分をレジから現金で受け取るという仕組みだ。手数料もかからないので、アメリカに来て間もない頃は、「なにこれ、めっちゃ便利!」と驚いた記憶がある。
でも、これができるのはデビットカードのみ。このとき私が持っていたのは、クレジットカード2枚だけ。それでも、とりあえずスーパーに向かい、何ができるかやってみることにした。
まず、レジで、デビットカードみたいにクレジットカードで現金が下せるか聞いてみる。レジの人が試しにやってみてくれたが、うまくいかない。レジで後ろに並んでいる人の冷たい視線に耐え、カード2枚とも試してもらったが、そうこうしているうちにレジ部門の総括の人がやってきて、クレジットカードではできないと教えてくれた。やっぱり。
次に、スーパー内にATMがあることを教えてもらったので、クレジットカードからの現金引き落としを試してみる。ところが、手続きの過程で必要になるPINコードがわからず、そもそも設定したかどうかも定かではなく、これもだめだった。
最後にダメ押しでカスタマーサービスへ。事情を説明し、「何か買ってカードで支払うから、それを返品手続きして、現金で返金してください」というウザい要求を、最大限に丁寧にお願いしたが、間髪入れず、「できません」と言われて終了した。
お店に戻って事情を話すと、数週間ほどなら取りおいてもらえることになった。わざわざ遠出したのに生産性のない買い物になってしまったが、欲しかったものは後日手に入りそうなので、まあよしとした。
しかし、日本にいた頃は、財布に現金を全く入れずに外へ出ることなんてなかったな、などと思い返しながら、財布の中身までアメリカに染まってきたことを感じた出来事だった。
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