気軽に他人と会話するアメリカ。会話もある種のアウトプットである
アメリカに住んでいると、全然知らない人と会話する機会が日常にあふれている。
例えば、近所を散歩していて、人とすれ違うとき。相手と面識がなくても、”Hi!” とか ”How are you?” などと一言交わす。
まあ、こういう挨拶程度のことは容易に想像がつくと思う。
でも、もう何歩か踏みだしたような会話になることもよくある。アメリカの人たちは、自分がなにかを思いついたときに、それを自分の胸だけにとどめず、言葉にして相手に伝えるという行為をとても気軽にやっている。
例えば、先日の話。
スーパーで買い物を終えて、出口を出たところで、外から入ってくる女性とすれ違った。彼女は、すれ違いざまにわたしを見てぱっと表情を明るくした。それを見て、わたしもにこりと笑顔を返したのだけど、心の中では、
「あれ、どこかで会ったことのある人だっけ」
と考えていた。まったく覚えがない。面識がないにしては、なんとも親し気なスマイルだった。
そんなことを何の気なしに考えていると、その女性が背後でこんなことを言うのが聞こえた。
「アナタのそのTシャツ、とってもかわいいわね」
わたしに言っているのか一瞬わからなかったけれど、反射的にわたしは振り向いた。彼女が笑顔でこっちを見ていたので、わたしに言っているんだとわかった。
「どこで買ったの?」
そのとき、わたしは象の絵がプリントされたTシャツを着ていた。着古してもともと薄い生地がちょっと頼りなくなってしまっている。でも、いまでもわたしのお気に入りのTシャツ。
「JCrewよ。もう何年も前に買ったから、まだ売ってるかわからないけど」
彼女は、ふんふんと頷きながら、後で本当に買いに行きそうな様子だった。
「そうなのね、ありがとう。わたし、そのTシャツ好きだわ」
そう言って、彼女は「Have a good day!」と軽く手を上げて、またあの親し気な笑顔を浮かべながらスーパーの中へ入っていった。
誰かの着ているTシャツがかわいいというだけで、その人を呼び止めて、それいいねってわざわざ相手に伝える?どこで買ったのかとか聞く?日本じゃあまりないよね。
でも、こういう気軽な会話がわたしは嫌いじゃない。アメリカに住むいいところの一つと言ってもいい。なんだろう、胸の内の思いを溜めずに吐き出すって気持ちいいのだ。ある種のアウトプットである。書いたらすっきりするのに似ている。
それに、この手のことを言われると、つまり自分のことや身につけているものを褒められると、言われた方だって嬉しい。そんなふうに思ってくれたのね、教えてくれてありがとうって気分になる。
だからどうっていうことではないのだけど、今日このTシャツを着ていたので、そんなことを思い出して、思ったままを書いてみた。
読んでくださり、ありがとうございます。
《アメリカ生活のことを書いています》
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