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【海外バイリンガル育児】子どもに日本語を習得させるために実践していること5つ

アメリカで子育てをしているわたしは、子どもには日本語と英語のバイリンガルになってほしいと願っている。なにがなんでもなってほしいと思っている。なぜなら、英語環境で育つ子どもがバイリンガルにならないということは、英語しか話せないということだ。我が子と日本語で会話できなくなってしまう。それは困る。とっても困る。

先日、少し前に書いたバイリンガル育児についての記事にコメントをもらった。

その人は、わたしと同じように国際結婚をして、海外で子育てをされている。2歳のお子さんの口から出てくるのは英語ばかりで、この先お子さんと日本語でしっかり会話できるのだろうかと不安に思っているとのこと。

すごくよくわかると思った。わたしも同じ不安を切実に感じていた時期があったから。だから、いただいたコメントを拝見したとき、まだ道半ばながらも、我が家の経験が誰かの役に立つのかもしれないとふと思った。うまくいったことやいかなかったこと、どんな壁にぶちあたって、それにどう対応してきたのか。これからその道をいこうとしている人たちの参考になればと願いながら、書いてみようと思う。

今回は、まず基本的な情報についてまとめます。

我が家の紹介

我が家は、アメリカ人の夫と日本人の私の国際結婚家庭で、アメリカに住んでいる。7歳の息子と5歳の娘がいて、2人ともアメリカ生まれ、アメリカ育ち。現地の小学校に通っている。日本に移住する予定は、いまのところない。

子どもたちとの会話は、夫が英語で、わたしが日本語で話す。子どもたちは、日常会話程度なら、私が話す日本語を完全に理解しているが、受け答えはほとんど英語。簡単な文章なら日本語で言うこともあるが、例えば、今日学校でどんなことがあったかといったまとまった話を日本語のみで話すのは難しい。

わたしが実践していること

1 一親一言語

我が家のように、家の中で複数の言語が入り混じる場合、子どもは、パパの言葉、ママの言葉というように、誰の言葉かで言語を区別して覚える。

我が家では、子どもたちに対して、夫は英語のみ、わたしは日本語のみで話すことを徹底している。特に言葉を覚えていく幼児期には、このルールはとても重要で、一親が言語を混ぜて話さないことが肝心。英語と日本語を混ぜて話しかけると、子どもも英語と日本語をごちゃ混ぜにして話すようになってしまう。

実際、気を付けてはいても、子どもたちの言葉がごちゃ混ぜになった時期があった。「だっこミー」とか、「トイをバイして(おもちゃを買って)」など、日本語の文の中に英語を組み込んで話すようになった。わたし自身の言葉遣いを改めて見直しつつ、都度、日本語での正しい言い方を教え、言い直すように促していたら、ごちゃ混ぜ語は次第に減っていった。海外に住んでいると、つい英語の単語を日本語の中に組み込んで使ってしまいがちなので、親もちゃんと気をつける必要がある。

2 日本語の読み聞かせや動画

普段、子どもたちはわたしとの会話でしか日本語に触れないので、それをなるべく補うべく、目と耳から日本語に触れる機会を増やす。

海外に住んでいると、日本語の本を入手することは容易ではないが、日本に帰るたびに大量の絵本を購入してきたり、日本語コミュニティの図書館を利用したり、定期的に開催されるバザーで日本語の古本を買い漁ったりしながら、本をそろえてきた。絵本を日本から取り寄せるのは、送料を含めて値が張るが、良質でリーズナブルな価格の古本を、良心的な手数料で海外発送してくれる「こども古本店」さんには、何度かお世話になっている。

そのほか、日本語の動画を見せる。昔話や童謡、手遊びに始まり、しまじろうは子どもたちが好きでよく見ていた。ジブリ映画はわたしが好きなこともあり、いまでもよく一緒に観る。幼児期から小学校に上がったいまに至るまで、継続して役立っている動画は、「NHK for School」。一般のNHK番組は、受信料と著作権の関係上、海外にいると視聴できないが、NHK for Schoolは、オンラインで視聴可能。教育的内容で、一話が10~15分程度と短いのも使い勝手が良い。

3 日本人の友達と定期的に会う

幸いわたしの周りには、子どもの日本語教育について同じような思いを持つ日本人パパ・ママさんがいて、時々集まって子どもたち同士を遊ばせている。親や先生から日本語を教わるという縦の繋がりだけでなく、友達と日本語で話すという横の繋がりも、語学を身につけていく上で重要な要素である。

4 手作り授業で子どもに日本語を教える

小学校に上がるまでの間は、隔週で集まり、親が交代で先生役になって子どもたちに日本語を教える会もしていた。毎回当番役が1時間くらいのプログラムを用意してきて、公園のピクニックテーブルや図書館の会議室などで授業をするのである。

<授業内容の一例>
・絵本の読み聞かせ(2~3冊)
・お友達に手紙を書く
・しりとり
・鬼のお面作りと節分の豆まき体験

親が自分の子どもに日本語を教えるというスタイルは、我が家でも試みたが、なかなかうまくいかないものである。でも、友達グループの中で親が交代で教えるのであれば、一定の緊張感が生まれて機能する。わたしたちは、言語だけでなく、日本文化も体験させたいという共通の思いがあったので、プログラムには季節に合った文化行事を極力組み込むようにした。学校に通わせるのと違って、内容に柔軟性を持たせられるのも良かった点だ。

5 日本語オンラインクラス

上述の手作り授業は、子どもたちが学校に上がってからみなそれぞれ忙しくなり、続けられなくなってしまった。その後、息子を日本語補習校に通わせたものの、後述するとおりうまくいかなかった。そこで、現在は、日本語のオンラインクラスを受講している。週1回、90分の授業である。

オンライン授業は、子どもの集中力との戦いである。最初の数回は、子どもたちが途中で画面を離れていなくなってしまうことが度々あった。だが、回を重ねていくうちに、発言する楽しさを知ったのか、積極的に参加するようになっていった。勉強量は補習校に比べたら微々たるものだが、日本語や日本文化を継続して楽しく学ぶという観点からは、我が家のニーズに合っている

うまくいかなかったこと

バイリンガル育児は試行錯誤の連続。実践してみたけれど、うまくいかなかったこともある。

1 子どもとの会話を日本語のみで完結させること

息子が3歳くらいまでは、わたしとの会話は日本語で完結させるように努めていたし、それができていた。だが、プリスクールに通い始めると、息子の英語力は飛躍的に伸び、英語を話す割合が増えた。自然、わたしが日本語で話しても、英語で答えることが多くなった。初めは、日本語で言い直すよう促していたが、息子は次第にそれを嫌がるように。特にわたしを心配させたのは、日本語で言いかけて、途中でやめてしまうことが散見されたこと。日本語を話すことが大変なために、わたしとの会話が薄っぺらくなってしまうのでは、と不安に駆られた。

それからは、息子が英語で話しかけてきたら、その内容を日本語で復唱してみせるにとどめ、言い直させるのをやめた。日本語に対してネガティブな感情を持ってもらいたくなかったし、なによりわたしとの会話が手かせ足かせがかかった不自由なものになってほしくないと思ったから。

親が退いた分だけ、子どもは踏み込んでくるので、あのとき以来、息子は自由に英語で話しかけてくるようになった。その様子を見て育ってきた娘も、当然同じように英語で話しかけてくる。

あのときの判断が正しかったかはわからない。周りを見てみると、この一線を守りとおしている家庭の子どもは、総じて日本語力が高い。一人目の子どもの言語能力や性格によるところも大きい気がする。

2 日本語補習校

我が家から高速で30分のところに、日本語補習校がある。毎週土曜のみの授業で、文科省の指導要領に沿った授業が行われる。読み書きまでしっかりできるバイリンガルになってほしいとの思いから、息子が日本の教育システムで小学1年生になるタイミングで、この補習校へ通わせることにした。

親と子の葛藤をなんとか乗り越えて入学したものの、息子はすぐに補習校へ行くことを嫌がるようになった。次第に、土曜の朝が修羅場に変わっていった。日本語なんてやりたくないと私をにらみつける我が子。当初は、日本語が苦手なのに日本語環境に放りこまれたことで居心地の悪さを感じているのだろうと想像した。その年の夏休みに日本へ行くことにしていたので、日本語が上達して日本にも興味が増せば、きっと何とかなると希望をつないで、なんとか1学期を終えた。

だが、日本に6週間滞在し、日本語力を大きく伸ばした直後にも、息子は頑として補習校に行くことを拒んだ。話を重ねるうちに、補習校に行きたくない一番の理由は、日本語がイヤだからではなく、週末まで学校に行かなければならないこと、一日中机に向かって勉強するスタイルが苦痛なことだとわかった。

わたしは立ち止まって考えた。嫌がる息子を無理やり補習校へ通わせることは、日本語学習の意欲をそぐどころか、日本や日本語に対する嫌悪感を植えつけてしまうのではないか。日本に移住する予定のない我が家にとっては、文科省の指導要領に沿って日本語を詰め込む必要はない。望んでいるのは、これからも継続して長期的に日本語を学び続けてほしいということ

考えるうちに、わたし自身の願いや息子にとってより良い学習環境が見えてきた。その結果、補習校は退学させて、先に述べたオンラインクラスに切り替えたわけである。

おわりに

わたしは、我が家のバイリンガル育児がうまくいっていると思っているからこの記事を書いているわけではない。さっきも書いたとおり、うまくいっていないこともあるし、もっと熱心にバイリンガル育児に励んでおられる人からみると、甘いと感じる部分もあるかもしれない。

教科書どおりに親が頑張っても、子どもが期待に応えてくれるとは限らない。子育て一般にも言えることだけれど、親としての願いを抱きつつ、目の前の問題に一つずつ向き合い、常に起動修正しながら進んでいくものだと思っている。

子どもをバイリンガルに育てたいと願う誰かの参考になれば、という思いを込めて。


♦♦これまでに書いたバイリンガル育児についての記事♦♦


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