アメリカ育ちの子どもたちが、日本で楽しみにしていたこと
我が家の子どもたちにとって、日本での楽しみは、両手でも足りないくらいいろいろあった。
新鮮で質のいい寿司をたらふく食べること、コンビニでお弁当やおにぎりを買うこと、アメリカでは売っていないふりかけやお茶漬けの素を買うこと…。
そのうちの一つが、布団でわたしと一緒に寝ることだったらしい。
日本の実家に滞在している間は、親子で布団を並べて隣り合わせに眠る。
アメリカでは、息子も娘もそれぞれ自分の部屋があって、自分のベッドで寝ている。
7歳の息子は、おやすみなさいをしたら、その先は完全に一人で寝る。時々、眠くなるまで自分で本を読んだりしている。一方、5歳の娘は、まだ寝付くまでわたしが部屋の中に残っている。添い寝はしない。ただ、部屋の中の少し離れたところにいるだけ。
でも、二人とも、できることならわたしと一緒に並んで寝たいらしい。わたしも、娘くらいの歳のとき、夜が怖かった記憶がある。夜中に目を覚ましては、父と母の寝室へ行って、ちょっと布団に入れてもらったりしていたっけ。だから、子どもが親と一緒に眠るときの安心感はよくわかる。
子どもの寝かしつけは、どの家庭もそれぞれのタイミングややり方がある。我が家では、添い寝することにわたしが耐えきれなくなって、息子が5歳になったときから、徐々に一人寝ができるように促していった。半ば強制的に。
どうやったかというと、まず息子に独立した部屋を与えた。壁を好きな色に塗り替え、新しいベッドを買って、息子の意向に添いながら部屋を整えた。そこで、添い寝をやめて、「大きい子のように」一人でベッドに寝ることを教えた。
最初の数日は、うまくいった。新しい部屋を持った嬉しさもあったのだろう。わたしが添い寝をするのをやめても、夫がベッドの脇で見守っていれば、眠ることができた。
でも、次第に、「ママと寝たい」と言い始めた。どうして娘はまだママと寝ているのに、自分だけ一人で寝ないといけないんだ、とゴネ始めた。当時娘はまだ3歳で、わたしは娘のベッドで添い寝していた。わたしは、また子どもたち2人と添い寝するステージへ逆戻りするのはどうしても避けたくて、頑として息子の要求には応じなかった。
新しい部屋と引き換えに、ママと一緒に寝る権利を失った。息子は、正確に状況を理解した。
「ママと寝られなくなるなら、新しい部屋なんかいらなかった」
息子は泣き声でこう言った。わたしは心が揺らいだ。でも、わたしも当時は育児に関して、精神的に限界がきていたんだ。わたし自身の時間を切実に欲していた。ごめんな、息子。みんないつかママから離れて、一人で眠るようになっていくんだよ。誰もが通る道なんだよ。
日本に帰ってきて、息子が布団の上でわたしにぎゅっと抱きついてきたときに、あのときのことをふと思い出した。
「日本にきたら、ママと一緒に寝られるのが嬉しい」
ママも嬉しい。そう言ってくれることが嬉しい。
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