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アメリカ育ちの我が子が展開する、歯で儲けるビジネス

うちの息子は、わたしの車の中に、お小遣いで買ったガムを保管しています。

運転席の斜め上に、後部座席を確認するための車内ミラーがついていて、その内側が小物入れのようなスペースになっています。そこがガムの保管場所です。

いつも、そこからおもむろにガムを取り出して、一個ずつ大事に食べています。今日も、ゴソゴソやっていたときに、ふいに息子が、

「あ、これ最後の一個だ」

とぼそっと言いました。また買いに行かなきゃ、などといっぱしの口をききます。

「お金、あるの?」

と聞くと、うーんと唸ったまま、言葉を詰まらせました。ないんだね。

すると、その2秒くらい後に、なにかを思いついて、急に明るい声でこう言いました。

あ、ボク、いまグラグラしてる歯があるから大丈夫だよ

それを聞いたわたしは、ブッと噴き出しそうになりました。

どういうことかというと。

我が家では、歯が抜けるとお小遣いがもらえるシステムがあるんです。

アメリカでは、子どもの歯が抜けたときにする、ちょっとした架空の設定があります。

それは、抜けた歯を枕の下に置いて寝ると、寝ている間に歯の妖精(tooth fairy)がやってきて、歯をコインと交換してくれるというものです。

もちろん、妖精の正体はみなさんのご想像のとおりなのですが、この習慣は広く行われています。子どもたちの間でも、歯の妖精がいくらほどコインを置いていってくれたかが話題になったりもするようです。子どもから伝え聞くよその家の状況は、その家の経済状況や金銭感覚が反映されていて興味深かったりします。

それはさておき、我が家では、夫の意向により、歯の妖精のお出ましはお願いしていません。一本抜けるたびに、夫が2ドルのお祝い金を支給するという制度を採用しています。歯の妖精に抜けた歯を持っていかれるのが惜しかったのです。

なので、さっき息子が「抜けそうな歯があるから大丈夫」といったのは、もうすぐお祝い金で2ドルが手に入るから、ガムを買うお金ができるという趣旨だったのです。

歯が抜けて手に入るお金を当てに、どう使うか考えている7歳児。

頭の中では、そろばんを弾いでいます。まるで小さなビジネスマンです。

「取らぬ狸の皮算用」じゃなくて、「抜けそうな歯の祝い金算用」だね。なんかツッコミどころ満載だな、このシステム。

息子は、抜けそうな歯がないか、ときどき歯を一本ずつ指で触ってチェックしています。このビジネスの元手ですからね。でも、「わざとグラグラさせようとしてはならん」と、言い聞かせています。変なインセンティブを与えてしまったものです。

「日本では、抜けた歯は外に投げるんだよ」

とわたしが言いました。下の歯は上向きに、上の歯は下向きに投げて、歯が丈夫に育つように祈るんだよ、と。

それを聞いた息子は、「なんてもったいない!」と顔をしかめました。2ドルをドブに捨てているようなものじゃないか。信じられない、といった様子です。

買い手がいないモノには、値段はつかない。

息子は、着実にビジネスを学んでいます。


読んでくださって、ありがとうございます。

《歯の妖精について書いた記事》

《息子のビジネスの話》




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