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流浪の食微録

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知られざる美味の探求と出逢いを求めて彷徨う、ロンリー・ミニマリストの食紀行。
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#おでん

春恋しい、おでんと魚料理に浸る夜。

春恋しい、おでんと魚料理に浸る夜。

「煮炊き屋 魚吉」2021年4月25日(日)

嵐のような突風は、容易いまでに体温を奪った。
ダウンジャケットはもちろんのこと、グローブも手放せない寒さであった。
まもなく5月だと言うのに、この寒さはいったいどこから襲来してくるのだろう?
こんな日々が続くと温暖化とは遠い未来の先のものに感じるのは、あくまでも端的な日々の断片にしか意識を向けていないことだとは、分かってはいるのだが。

久方ぶりの日

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すすきのの闇と寒さの中で出逢う、おでんと日本酒の快。

すすきのの闇と寒さの中で出逢う、おでんと日本酒の快。

「おでん処 わんらうんど」2021年1月11日(月・祝)

もしも、この寒さに頷くとすれば、
体も心もとろけるような温もりを欲する。
もしも、この空腹が満たされるならば、
染み入るような食と酒を求める。

その願いと期待に反して、街のネオンの数は乏しく闇に支配されつつあった。
歩いても歩いても、シャッターで閉ざされたおどろおどろしい空漠しかなかった。
妥協と諦念の只中に揺れ動く空腹。
そこにどこか

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未知なる美味が集う、小樽の夜の至福。

未知なる美味が集う、小樽の夜の至福。

「酒処 ふじりん」2020年11月28日(土)

列車の轟音、鄙びた商店街、静かに降り積もる雪。
知らない街だというのに、どこか懐かしいくせに、
賑わいのないそのどこかに、世界の没落を夢見る不埒な欲求を心の隙間に垣間見る。
歳を積み重ねるとは、そんな心象風景の繰り返しなのかもしれない。

謎めく小樽を巡る最後の店に入ると、意想外の混み様であった。
しかも客層は程々に若々しく、世界の没落など幻想に過

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