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【読書】『世界地図の下書き』朝井リョウ【前に進む希望】


私の通った小学校・中学校の学区内にも、児童養護施設があったことを思い出しました。


そこの子だからどうこう、ということはなかったです。でも、私は当時、家族の誰かではなく、自分にばかり目を向けて、模試の順位や部活内の人間関係だけに泣いたり笑ったりしていましたが、彼らは違ったのかもしれないとふと考えました。


「青葉おひさまの家」で出会った新しい仲間


小学3年生の太輔は、両親を事故で亡くし、太輔を引き取った伯父伯母からもひどい対応を受けたため、児童養護施設「青葉おひさまの家」にやって来ます。


この地域には、蛍祭りという伝統がありました。地元の紙で作ったランタンを飛ばし、願い事をするのです。


「青葉おひさまの家」で太輔が入った班には、中学3年生で優しい佐緒里、慎重な淳也と元気な麻利の兄妹、おませな美保子がいました。太輔は少しずつ心を開き、同じ班のみんなと仲間になっていきます。


太輔が施設に入ってから3年。財源の問題などで蛍祭りは中止され、高校3年生になった佐緒里は東京の大学を目指します。太輔たちがみんなで一緒にいられる時間には終わりが見えてくるとともに、一人ひとりに厳しい試練が与えられます。太輔たちは、佐緒里のために、あることを計画します。


前に進む希望が持てるお話


太輔たちが抱えるもの、乗り越えなければいけないことは決して小さくなくて、やるせない気持ちになる箇所もありますが、最後まで読むと、前に進む希望を持つことができます。


世界は広くて、逃げたってよいし、きっとまた素敵な人に出会える。


良い意味でも悪い意味でも、自分の周りだけが世界のすべてに思えるとき、思い出したいお話です。「この人たちと離れたらもう生きていけない」と思うときでも、またどこかで同じように大切な人と出会える。上手くいかなくて、別の世界へ行きたいと願うときは、逃げてみれば、きっと逃げた先で素敵な人と出会える。


読んでいくうちに太輔たちを応援したい気持ちが強まってきました。彼らの未来が、どうか、幸せで溢れますように。


これまでと同じだけの希望が、これから先にも必ずある。



お読みいただき、ありがとうございました。



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