見出し画像

【読書】『行きたくない』加藤シゲアキ他【癖があるけれど面白い】


夏季休暇明けの月曜日の朝が憂鬱すぎて、日曜日の晩、『行きたくない』(加藤シゲアキ、阿川せんり、渡辺優、小嶋陽太郎、奥田亜希子、住野よる)というアンソロジーを読みながら、寝落ちしてしまいました。


ちょっぴり癖のあるお話ばかりですが、面白く読めました。


様々な「行きたくない」


なんとなく会社に行きたくない気持ち。新たな世界へ踏み出すことへのためらい。ここに残っていたいという思い。


様々な「行きたくない」が描かれます。


◯『ポケット』(加藤シゲアキ 著)
彼氏のマーカスと別れることとしたアンと、別れる様子を近くで見守っているようアンから頼まれた条介と、「完成したら」行くと言って学校に来なくなった望杉。
高校生の彼らがクラブ「Archivist」に集結して…。


◯『あなたの好きな/わたしの嫌いなセカイ』(阿川せんり 著)
毎週金曜日に保健室を訪れる御子柴さんは、わたしが嫌いな作家、八木沼奏多が大好き。そんな御子柴さんに、保健室の先生であるわたしは話を合わせ続けるのですが…。


◯『ピンポンツリースポンジ』(渡辺優 著)
みんな、自分専用のロボットと共に生活する世界。僕のロボットが急に、「会社に行きたくない」と言い出して…。


◯『シャイセ』(小嶋陽太郎 著)
同棲していた彼氏が出て行ってから、私の生活は崩壊気味。会社に行くことにも耐えられなくなってきた。そんな中、私に、近くのコンビニ店員「シャイセ」と話す機会が訪れて…。


◯『週末のアクアリウム』(奥田亜希子 著)
佳緒は、夫の哲大と二人で暮らしている。仕事はせず、家事もあまりせず、気ままに過ごしている佳緒だったが、二人の世界のバランスはいつまでも保たれていなくて…。


◯『コンピレーション』(住野よる 著)
昼間はぼうっとして過ごし、家に帰ると、毎日違う女友達が迎えてくれるという生活を送る私。この世界は、何かがおかしくて…。


「なんとなく行きたくない」も悪くない


私の一番のお気に入りは、『ピンポンツリースポンジ』です。


これまで、職場などに「行きたくない」という気持ちになる明確な理由がないと、「行きたくない」のは自身の怠惰かなと考えてしまいがちでした。いじめてくる人がいるとか、どうやってもできない仕事を押し付けられるとか、そういう理由がないと、「行きたくない」なんて思ってはいけないのかな、と。


しかし、このお話を読んで、「なんとなく行きたくない」という気持ちも悪くないなと感じ、むしろ、愛しささえ覚えるくらいになりました。


そして、行くのも悪くない


このアンソロジーには、「行くべきだ」というお説教じみたお話は一つもなく、また、「行きたくない」人を直接的に励ますような言葉があるわけでもありません。


しかし、読み終わると、「行くのも悪くないか」と思わせてくれる不思議な力がありました。


これからも、一歩を踏み出す勇気が出ないとき、なんとなく気が進まないとき、この本を開いて、自身の気持ちを見つめてみたいなと思います。



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?