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【一気読み必至】『白馬山荘殺人事件』東野圭吾

普段、『◯◯館の殺人』とか『◯◯荘殺人事件』のような、人里離れた屋敷や宿で事件が起こる、いわゆるクローズド・サークルものを読むときは、その非日常さにわくわくする。

しかし、本作品については、読み始めると、わくわくした気持ちになるより先に、主人公の不安が伝染してきて、この不安を拭うために読み進めなければ、と急き立てられるようにページを捲ることとなった。

【前半】ナオコの不安が伝染する

自殺とされた一年前の兄の死に納得できない大学生のナオコは、親友のマコトと一緒に、兄が泊まった信州の山奥のペンションを冬休みに訪れる。

そのペンションは「まざあ・ぐうす」という名前で、各部屋にはマザー・グースの唄が彫られた壁掛けが飾られ、部屋の名前も唄の一部から付けられていた。

冬休みの時期は、毎年常連客が泊まっているという。そして、ナオコの兄の死の前年にも滞在客が亡くなっていた。

毎年の常連客ばかりということは、兄の死が他殺だとすれば、ナオコやマコトとともに現在宿泊している人たちの中に犯人がいることになる。誰も信用できない中、ナオコの不安が直球で伝わってきて、なんだか落ち着かない気持ちのまま、先を急いだ

【後半】暗号の解読に興味を掻き立てられる

ナオコは、ペンションにいる兄から、「マリア様が、家に帰るのはいつか?」を調べてほしいと書かれたハガキを受け取っていた。

ペンション「まざあ・ぐうす」には少し変わった経緯があり、マザー・グースの唄に関連したとある暗号を解読しようと、兄は奮闘していたようだった。

後半は、暗号の解読に興味を掻き立てられ、引き続き先を急いだ。ナオコやマコトの調査が軌道に乗り出すと、ナオコの不安よりも覚悟が伝わるようになってきた。

【最後】畳み掛けるような伏線回収

多くの要素が含まれている本作品、畳み掛けるようにそれらが回収されていく最後まで、先を知りたいとページを捲る手が止まらず、一気に読んだ。

読み応えのある一冊だった。

初期の作品が新装版として刊行されているのが嬉しい。『東野圭吾公式ガイド』を参考に、未読の作品を読んでいきたい。

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