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【読書】『教室が、ひとりになるまで』浅倉秋成【スクールカースト×ミステリー】


浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』が、本屋大賞にノミネートされています。おめでとうございます。


昨年、この作品を読んでとても面白かったので、今回、同じ作者の『教室が、ひとりになるまで』を手に取りました。


※この本は、kindle unlimited で読むことが可能です(令和4年1月23日現在)。


3人の高校生の自殺


垣内は高校2年生。彼の通う高校で、同級生と隣のクラスの生徒、3人が次々と自殺します。垣内は、幼なじみでクラスメイトの美月から、「3人の死は自殺ではなく殺人事件」であると聞きます。


垣内や美月のクラスと隣のクラスは、定期的に合同でレクリエーションを行っているのですが、ある日のレクで仮装パーティが開かれた際、死神の仮装をした女子生徒から、「殺してほしい人はいないか」「あの子たちは自殺ではなく私が殺した」「次に殺す相手は決まっていて、その次の候補の一人が美月である」というような話を美月は聞かされたというのです。



3人目は死神の「予言」どおり亡くなり、その次の候補はこずえという女子か美月だということで、美月は不登校になってしまいます。


垣内は、こずえを守ってほしいと美月に頼まれますが、死神によって生徒が殺されているなどという話は簡単には信じられません。ところが、垣内はとある手紙を受け取ったことから、美月の話を信じることとなり、3人の死の真相を探るため、動き出すこととなります。


スクールカーストとミステリー


このお話は、スクールカーストとミステリーの融合ということで、何だか新鮮でした。高校には特殊な能力を授けられた生徒が4人いるという非現実的な設定がありつつも、どこか生々しさが感じられます。


教室で生きることの難しさに心から共感するには、私は少し年を取りすぎてしまったみたいです。社会人として中堅に差し掛かってきた今、垣内たちの気持ちを自分ごととしてすべて理解できた自信はありません。でも、ある狭い世界での窮屈さとか、誰かと関わるのは煩わしいけれど一人は寂しいという屈折した感情とか、そういうものは今でも納得できて、心がぎゅっとなりました。


集団って、本当に難しいですね。悪気がなくても誰かを追い詰めてしまうかもしれない恐怖、本当の気持ちを言い出せないもどかしさ、自分の居場所が確保できているかという不安。多様性を認める、なんていうと、多様性は私が認めなくてもそこにあるわけで傲慢なので、多様性がそこにあることを認識するという意味での「寛容性」のようなものがキーになる気がします。




社会人である私が読んでももちろん面白かったですが、学生さんの感想なんかも聞いてみたいと感じる作品でした。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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