別府 鉄輪温泉(大分県別府市) ジオ探訪記
別府を訪れる
2024年8月17日~20日に、日本地学教育学会全国大会(大分大会)の発表のため大分を訪れました。
8日に発生した日向灘沖の地震により発表された「南海トラフ地震臨時情報」は15日には終了しましたが、出発を予定していた16日は台風が日本列島に接近。航空便も欠航となってしまったため、翌日に振替をして出発しました。
学会発表終了後の19日には、おおいた豊後大野ジオパークめぐりを計画していたのですが、雨予報のため、予定を変更して別府に向かうことにしました。
雨の日のジオ観光
19日、予報通り朝から雨です。このような日は屋内の見学・体験施設や博物館などを探してめぐることにしています。
今回は、大分マリーンパレス水族館「うみたまご」で生き物たちの見学をしたり、大分香りの博物館にて香水の調香体験をして、雨が止むまで過ごしました。
プチ地獄めぐり体験
午後から雨も止んだので、地獄めぐりで有名な鉄輪(かんなわ)温泉に向かいました。
午後2時すぎに鉄輪温泉に到着。少し温泉街を歩いてみましたが、街中のいたるところで湯けむりが立ち上っています。
これは一日かけないと全部回れません!
ゆっくりと地獄めぐりをする時間もないので、地獄温泉ミュージアムにて「地獄温泉ミュージアム」「海地獄」「鬼石坊主地獄」の3か所が入場可能な ”3か所入場セット券” を購入して巡ることにしました。
まずは、ミュージアムに入場。
ただの展示と思いきや、スタンプラリーやクイズ(解答ワードを提出するとお土産をもらえる)などがある参加型。雨水が温泉水になりそして温泉として人々に利用されるまでの4つのシーンを体験をします。
チーム〇ボを思わせる空間演出の中で自分が雨粒になった気分で、楽しみながら地下水が別府八湯とよばれるさまざまな泉質の温泉となる仕組みや、別府の温泉の歴史から”地獄”観光の成り立ちまで知ることができます。
ミュージアムで、思ったより時間を使ってしまったので、急ぎ足で鬼石坊主地獄と海地獄を廻ります。
鉄輪温泉街は、別府の北側に流れる平田川沿いの傾斜地にあり、すべての地獄や周辺の地形や街の様子を見ながらめぐるのは結構体力を使います。
この猛暑のなか、2つの地獄をめぐって歩いただけで汗だくとなってしまいました。
散策後は、カフェで甘いものを食べながら一休み。帰路についたのでした。
火山と断層がつくった日本一の温泉
源泉数、湧出量が日本一の「別府八湯」
別府エリアにある8つの温泉地を総称して「別府八湯」と呼ばれ、その源泉数や湧出量は日本一を誇っています。
では、なぜ別府に温泉が集中しているのでしょうか?
下の別府エリアの鳥観図を見ていただくとわかりますが、別府の周辺には東西方向に多くの断層が走っています。
別府湾から鶴見岳、由布岳、九重連山、阿蘇山を経て島原半島まで至る九州中部を横断するように"島原-別府地溝帯”という20~30kmの幅を持つ地溝帯があり、別府周辺の断層群はこの地溝帯に沿うように存在しています。
そして、この地溝帯の中には多くの火山があり、鶴見岳や由布岳は現在でも活動している活火山です。この地溝帯の中にある温泉は、これら火山に含まれる熱水や火山ガスに地下水が混入して湧き出したものです。
別府市街のすぐ西側には活火山である鶴見岳があり、別府の街は鶴見岳の扇状地の上に広がっています。
温泉の集中しているエリアを見てみると、扇状地の北側にある鉄輪断層と南側にある朝見川断層が存在している付近に集中しています。
鶴見岳の地下のマグマで暖められた熱水が、断層でできた岩盤の亀裂を通ってきた地下水と混入して豊富な温泉水となって湧出しているのです。
そして、温泉水の流路の違いにより、火山ガスに含まれている成分や地下水との混入の割合などに違いがでてくるため、様々な多様な泉質を生み出しています。
別府温泉地球博物館でバーチャル見学
もう少し詳しく、温泉とは何か?なぜ様々な泉質の温泉が湧出するのか?泉質ごとの特徴やでき方の違い、などを科学的に知りたい方は、ぜひ別府温泉地球博物館というウェブサイト(バーチャル博物館)をご覧ください。
上記のような疑問や探求テーマについてジオサイエンスの観点から詳しく案内・解説されています。
このサイトの「フィールド博物館」で紹介されているジオツアーコース、機会があれば見て回りたいと思います!
観光と防災について
2016年4月に熊本地震が起こりました。この地震では”島原-別府地溝帯”にある複数の断層帯が連動して活動したことによって多くの被害が発生しました。また、先日(2024年8月8日)の日向灘沖の地震は、南海トラフ地震に関連するものではないかということで、臨時地震情報が発表されました。
別府温泉は日本有数の観光地のひとつとして国内外から多くの人が訪れます。これは温泉地の宿命なのですが、上記のような地震災害のほか、火山噴火やがけ崩れや土石流の発生など危険と隣り合わせの場所のため、自然災害は必ず発生します。
日々の地球科学的な観測・調査・研究・教育と、まちのインフラづくりおよび「減災」体制の構築と連動が、街の持続的な発展と安定した生活のために重要な課題であることは間違いありません。
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