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町を捨てよ、書へ出よう。 下

もっと広い範囲に目を向ければ話は変わってくる。相談する対象を広げるのだ。自分が直接知らない人や、今は死んでしまっている人、言葉の通じない相手などにまで視野を広げてみるのだ。

人間の悩みの種類はそう多いわけではない。今いるコミュニティの中で、あなたの悩みは唯一無二かもしれないが、同じ悩みを抱えたことのある人は世界に大勢いるはずである。

そんな人々の中に理解者を見出す努力をすれば良いのである。

そして、私は、それを助ける最強のツールが本であると考える。

本には様々な人間の様々な苦労や苦悩が反映されている。何かを生み出す人の背景には、それが生み出されるに至った経験がある。

本の中には、あなたと似た体験をし、同じように世界を見ていた人がいる。

そして、本は物である。人間は物に愛着を抱くことができる。自分の理解者を見いだせた本を肌身離さず持っていれば、その本から安心感を得られるようになり、持続的に苦しみを和らげてくれる存在になるだろう。

また、本からは情報を体系的に得ることができる。より詳しく、作者のことや、そこに紹介されている人々について知ることができ、雑誌や新聞等の他メディアに比べ、より親近感をいだきやすく、理解者を見出しやすい。

さらに、本を通すと、過去の人物や外国語を使う人々とも繋がりやすい。何十年も前に出された書籍も、本屋や図書館にはあるし、外国語から翻訳された本も数多く在る。時代や国境といったものを超えて理解者を見出すことを助けてくれるのである。

このように、本には、そこに自分の苦しみに対する理解者を見出しやすい要素がたくさんある。

もし何かに苦しみ、理解者がいないことによって、より苦しんでしまっているようなときには、本の世界を探してみよう。きっと同じ悩みを抱えた人に出会うことができる。

そうして苦しみが和らげば、前を向いて、自分をより生きやすくするためにはどうすればいいのかを考えられるようになる。

町に出られないのであれば、書に出ようではないか。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!