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歯磨きもしないまま

久々に会った友と夜通し語り合った。
9時や10時には話し始めていたはずなのに、気づけば3時を過ぎていた。

彼女は彼女の悩みを語った。
詩作に関する悩みだった。
彼女には彼女の好きな文章がある。
彼女にはその素晴らしさが十分に理解できているはずだっだ。
しかし、だからこそ自分の書くものとそこに書かれているものの差に苦しんでいた。
どうやってその溝を埋めればいいのか。
その方法を掴みかねていた。
彼女は私に詩を手渡した。
私は私が語ることを語った。
彼女は耳を傾けた。
彼女は感謝をしてくれた。
私は少々恐縮した。

窓を黒く染める静けさと、ぼうっと灯ったテーブルの上のランプの光が私達に触れるものの全てだった。

私の口が何かを漏らし始めた。
それは不満だった。
現状への違和感がはっきりと言葉に落ちていった。
私は私の予想以上にそうあるべきではない状態にあったようだった。
彼女は彼女の心にあることを語った。
私の中には無かった言葉で私の意見を肯定してくれた。
私の中にある種の確信が生まれた。
それは一つの決心へと姿を変え、一つの道を示した。

話の区切りというものは、なんとはなしに分かるものである。
時計を見て驚いた。
これまでの話の結論を再確認した。
他愛もない冗談を言った。
名残を惜しんでいた。
しかし、そこで終わらなければならなかった。

私達は歯磨きをしていなかったのだ。
シャワーを浴びていなかったのだ。
眠らなければならなかったのだ。


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