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【建築観賞備忘録】前川國男:京都会館








前川國男の京都会館は、冬の夕方の斜光線で見るのが一番よい。とりわけ、南西の角のガラス窓の嵌められた位置を、二条通りの橋から見るのがちょうどよい。お菓子のような彩り色合いを見せ、美味しそうだ。朱の混じったオレンジに、窓の桟やガラスは閃光し、ふだんは突き放すような冷ややかさを見せるコンクリートの壁さえも、幼い頃に見た図工室の温もりに似た感興を呼び起こす。前川はレンガ風に見せる積りだったのだろうか、レンガといっても朽灰色の、これもまた日中みてみれば薄寂しいタイル壁さえも、ああいうチョコレートだと言われれば、満更でもない。また憎らしいことに、ガラス窓の向こうに、中の赤い椅子や木造りの赤茶けた壁があり、これも夕日に照らされると、なお一層、ハーモニカの優しい和音を聴いた気分を起こさしめる色になる。単に、石造の壁でマッスが満たされていたのでは叶わぬことで、一部に少しくガラス窓の艶めきがあるおかげで、円やかなパッチワークを呈している。冬の斜光線を浴びたそれらは、祖母の家でいつか感じた、夕の4時ごろの、まどろんだ気持ちをいくらでも自分に思いださせてくれる。




(※見出しの写真は京都会館ですが、上記に該当する時間や角度に基づいて撮影したものではありません)

(※筆者は建築物(特に近代)が好きですが、世に出回る間取り・構造に関する議論に、深い関心はありません。むしろ、建築物を見て感じるところや思い出に残るところといった、“具体的なカタチには残しきれない建築”を、【建築観賞備忘録】に書き留めていきます)




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