見出し画像

第2話 マントル対流とプレートテクトニクス

ジオリブ研究所所長、ジオ・アクティビストの巽です。

「不動如山」とよく言われるが、決してそんなことはない。大地は動く。そしてそれを支配しているのが「プレートテクトニクス」だ。しかも不思議なことに、この現象は太陽系惑星の中で地球だけに発現している。なぜ? 今回と次回はこの謎解きに挑戦しよう。 

さあ、ジオリブしましょ!

地球の最高点であるエベレスト山では、アンモナイトや三葉虫、それにウミユリなど、数億年前に海で暮らしていた生物の化石が見つかる。かつての海底が何千メートルも隆起した証拠である。エベレストは、海底が1万メートルほども隆起してできたのだ。このような「造山運動」は、地球の表面を覆う十数枚のプレートが動いて互いに力を及ぼし合うことで起きる。これが「プレートテクトニクス」のツボである。

惑星の内部構造とマントル対流

プレートテクトニクス発現の謎を解くために、まず、「地球型惑星」と呼ばれる地球とその兄弟たち(水星、金星、火星)の内部構造を見てみよう。これらの惑星はおおよそ同じような組成(=岩石+鉄合金)を持つ。そうなった訳は、太陽からの距離だ。

木星より外側の惑星は、主に軽いガスや氷でできている。一方、重い岩石や金属には大きな万有引力が働くので、原始太陽の近くに引き寄せられる。それらが集積と衝突・合体を繰り返し、やがて地球型惑星となったのである。

もちろん内部構造もよく似ている(図1)。ただし他の惑星で、地球のように金属(鉄ニッケル合金)の中心核が固体なのか、それとも核全体が液体なのかは、まだよく分かっていない。それでも、地球型惑星の内部は鉄合金の融点より高温であることは確からしい。

図2.1

図1 地球型惑星の内部構造

惑星表面の平均温度(マイナス数十度〜数百度)を見ると、地球型惑星のマントルには大きな温度差があることが分かる。熱い味噌汁はやがて冷める様に、自然はこんな温度差がある状態が続くことを許さない。マントルを通してどんどん熱を表面へと運んで核を冷やし、全体が一様な温度になろうとするはずだ。

水星、金星のプレートは1枚

ここで、熱の運搬について復習しておこう。昔学校で習ったように、熱の伝わり方には、放射・伝導・対流の3つがある。

放射では電磁波として熱が運ばれるのだが、電磁波の代表である光が地球の中を通過しないことから直感的に分かるように、地球内部では効率が悪い。では、伝導と対流のどちらが地球内部の熱を運ぶのだろうか?

まずは、金属の核以外、すなわち地殻とマントルを形づくる岩石の性質を述べておこう。何といっても岩石は、熱伝導が悪い物質の代表格。その度合いは、金属のわずか1000分の1程度である。だから、比較的薄い岩石層では伝導で熱が運ばれるのだが、マントルのように厚く(約2900km)なると、代わって対流が優勢となる。そう言われてもにわかには信じ難いかもしれない。だって、マントルはほとんどが固体(岩石)だし、当然、固いはずだ。

しかしここで大切なことは、温度が上がると、たとえ固体でも粘り気(粘性)が小さくなり、柔らかく流れやすくなることだ。つまり内部が高温の地球型惑星では、マントル対流が自然の摂理なのである。ただしその速さは、たかだか年間数センチメートル程度である。

逆に温度が低い惑星表面付近では、岩石は内部に比べてずっと固くなり、1枚のガッシリした蓋(ふた)のように惑星を覆ってしまう(図2の不動蓋型)。当然このプレートと呼ばれる蓋の部分は固くて流れにくいので、伝導が熱を運ぶ主役となる。

図2.2

図2 マントル対流の2つの様式

一方で高温の内部では、活発な対流が起こる。また深部の高温領域(ホットスポット:熱い所)からマントルが湧き上がる所ではマグマが発生して、火山活動が起こる可能性がある。

不動蓋型マントル対流はシンプルかつ普遍的な対流様式である。スーパーコンピュータなどでいろいろ条件を変えてマントル対流を再現しても、必ず不動蓋型マントル対流になる。実際、水星、金星そして火星でも、このメカニズムによってだんだんと冷えているようだ.

しかし、地球だけは様子が違う。たった1枚ではなく複数のプレートが表面を覆い、それらのプレートが動いている(図2のプレートテクトニクス型)。だから地球では、沈み込み帯や海嶺で地震や火山活動があり、地殻変動や大陸移動などさまざまな現象が起こってきたのだ。

では、なぜ地球だけが特別なのだろうか?

その原因は、地球が太陽系唯一の「水惑星」であることと大いに関連している。次回はこのお話をすることにしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?