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ビジュアル実証経済学3 ステイホーム「できるということ」

先日,経済時系列データの可視化として,経済時系列データから,不景気,倒産,失業と自殺に関するデータを可視化した.

一方で,経済的,文化的に発展した世界に必要なものが明かりである.昨今では人工衛星の技術的な発展もあり,夜間の明かりをデータとして取得し,それを雇用,都市開発,人口,医療と言った様々な基礎的な経済指標と関連して説明する論文もある.つまり明るいところは,すなわち都市であるといえる.

こうした都市に"住む"とは,どういうことであろうか.ある者は持ち家に,ある者はマンションやアパートに,あるいはネット喫茶のようなところで過ごす者もいるかも知れない.一方で,残念ながらコロナ禍の終息にはさらなる時間が必要とのことで,非常事態宣言は延長され「ステイホーム」週間も延長されることとなった.では,路上生活者はどうであろうか.

今回はいわゆるホームレスについてのデータと失業との関連性に関してデータ可視化を行ってみたい.ホームレスに関しては,厚生労働省がホームレスの実態に関する全国調査を行っている.これらのデータに関しても,e-statに公開されているが,残念ながらデータベース形式にはなっておらず,それぞれの年度ごとに発行された,PDFやExcelを加工することとなる.

生活保護や自立支援などの様々な社会活動の成果としてなのか,ここ数年連続してホームレスは減少傾向にある.しかし,これまで調べてきた失業と自殺に倣い,失業とホームレスの関連性も大変高い.そして,失業と自殺に倣うのは相関の高さだけでなく,男性の方が女性に比べて失業がホームレスに直結しやすいと思われる.もちろん,実態調査が難しいためか,データ数が少ない部分があるとはいえ,確かに女性のホームレスはあまり見たことがない.

失業率とホームレス人数相関

失業者人数とホームレス人数相関

失業率とホームレスに関しては,総数に関しては,ホームレス生活者人数 = 2401.8*失業率 -1131.39 で与えられ,R^2: 0.974139,P-value: < 0.0001 と,非常に当てはまりが高く.また同様に,男性に関しては,ホームレス生活者人数 = 2236.87*失業率 -1071.88,R^2: 0.971681,P-value: < 0.0001で与えられる.一方で女性は,ホームレス生活者人数 = 63.9464*失業率 + 15.32で与えられ,R^2: 0.871758,P-value: 0.0020988と,当てはまりは高いが,失業率(失業者数)が上がっても,ほとんど変化しない.

もちろん,自殺にせよ,ホームレス生活にせよ,経済的な不況や失業率だけで説明できるものではない.ただ,これら一連のデータからは失業率が1%上がると,ホームレスは2401人増える.そして,そのほとんどは男性であるということも,データ上からは読み取ることができる.前回の失業と自殺と併せて考えると,約3716人自殺者が増加し,ホームレスが約2401人増える.そう考えると,失業率1%がとてつもないように感じられる.

さて,そうしたホームレスのここ最近の推移や,起居場所は一体どのように変化したのであろうか.また,最も多くホームレスが確認される都道府県はどこであろうか.

ホームレスの実態に関する全国調査

ここ数年にわたり,減少を続けてきたようであるが,起居場所は河川が最も多く,都道府県の中では東京,大阪そして神奈川が圧倒的に多いことが分かる.これに関しては,詳細を確認したい方は下記リンクから確認していただきたい.

冒頭の夜間光の強さを可視化してみると,東京を中心として神奈川から千葉の一部地域,そして大阪から京都や名古屋といった都市部は白く表示されており,明るいことがよくわかる.(透明はデータ欠損)

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さらに人口密度と併せて考えると,明るいところとほぼ対応しており,それは多くの人が集まり,活発な経済活動が行われている.一方で,ホームレスも多くなるというのは--比例するという点では,ある種,当然の帰結ではあるのかもしれないが--経済資本の潤沢さというより,社会資本の脆弱性のような気がしなくもない.

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昨今,コロナ禍の発生当初と比べ,様々な問題が浮き彫りになってきた.特に,非常事態宣言の延長による休業補償が問題になっているが,なるほど,このまま不景気になった時,失業率1%がどういった問題を巻き起こすのか,新たな生活様式の模索とは,一体どのようなものであろうか.デジタルにアクセスすることが可能な人間達が特権的に享受できる社会であるのか.それは既存の社会では可視化されていなかった貧富の差による社会の分断であると危険視する論も散見される.あるいは,リモートによる勤務が可能となることで,一部地域のみの人口集中が緩和され,地方との人口密度差が減少されるとする論調もある.いずれにせよ,急速に進む激変の只中にあるといことは疑いようがなく,禍の終息を願うばかりである.

夜間光データ引用元【NOAA】https://ngdc.noaa.gov/eog/dmsp/download_radcal.html
人口データ引用元【国土数値情報】http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/
「このサービスは、政府統計総合窓口(e-Stat)のAPI機能を使用していますが、サービスの内容は国によって保証されたものではありません。」

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