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ビジュアル実証経済学2 不況と自殺

先日,経済時系列データの可視化として,失業に関するデータを取り扱った.同様に,今回は経済時系列データから,不景気,倒産,失業と自殺に関するデータを可視化する.

尚,予めお断りしておくが,政府公官庁の公開するデータを中心に経済関連のデータの可視化を行うこと,特に本稿はe-StatのAPIを用いたデータ取得(一般的なAPIより少々煩雑な仕様)に対する技術的習得を目的とするものであり,データから推測される事象などから,一連の政府対応への批判や今後の諸々の補償問題に関する何らかの政治的な意図を含むものではない.

オリジナルデータに関しては,厚生労働省の人口動態調査になる.このデータはe-Stat上でも公開されている.

死因に関しては,かなり古くからデータが取得されているようである.このデータを利用して,経済的な不況と自殺の間に関する相関性を想定し,可視化してみたい.

自殺者数(時系列)

自殺者に関しては,年次ベースの数値で1899年からデータがある.2003年が最大で32000人以上となっている.また,ここ数年間は減少傾向にあったことが確認できる.もちろん,人口総数との関連などもあるが,それよりも興味深いことがある.それは,波形を比較したときに総数と男性,女性では,男性の方が総数に近いということである.これが,何を意味するものであろうか.

既述の失業者・率のデータ(月次)を年平均に変換し,自殺者・率のデータと結合する.そして,この失業者・率と自殺者・率の間にある相関性を確認する.

失業者数_自殺者数_相関

自殺者総数に関しては,失業者総数との間にR^2≒0.847・p-value<0.0001と十分に関係性があることが確認できる.同様に男性,女性のそれぞれに関して自殺者数と失業者数に関して確認する.

失業者数_自殺者数_相関 (1)

R^2≒0.904・p-value<0.0001となる.一方で,女性の場合はどのようになるか確認する.

失業者数_自殺者数_相関 (2)

R^2≒0.175・p-value<0.0024となる.このことから,1899年以降の日本においては失業者の増減と自殺者増減は男性の方が相関性が高いことが伺える.
つまり,失業者が増えると自殺者が増える.そしてそれは,男性の方が多くなる可能性が高いということである.


失業率_自殺者数_散布図

このグラフは,完全失業率と自殺者数に関しては,R^2≒0.867・p-value<0.0001と十分に相関性があることをしめしている.そしてこれは,自殺者数 ≒ 3716.41*完全失業率 + 12345.8で与えられることから,完全失業率が1%上昇すると,約3716人自殺者が増えるという解釈が可能であろう.

今回は完全失業率のデータであるため,いわゆる失業率自殺者の相関に比べて,やや,大きいように感じられる方も多いかもしれない.休業や正規・非正規の区別なく1時間でも働けば完全失業者とはならないため,値がシビアに反応するためであろう.完全失業率の詳細に関しては,総務省統計局の下記リンクを参照されたい.

失業者数_自殺者数_時系列


必要以上に影響力を大きく感じられてしまうようなことも,それはそれで問題であり,そうしたことを防ぐためにも一部欠損値等に関しては,スプラインや移動平均など何らかの手法で値を補完しても問題ないかと推察される.

また,今後は株価や石油,為替等の情報と倒産,破産に関するデータなどから景気変動及び,今回のコロナ騒動にまつわる経済的なインパクトや政策介入効果に関してもその算出を行っていきたい.

分量の都合上,基本的に失業者数・自殺者数でのデータに関して記載したが,医療データなど人口10万人対比でのデータの取り扱いが主なデータもある.自殺に関しては,厚生労働省のデータであり,これら10万人対比のグラフに関しても確認したい場合は,下記Tableau Publicにて公開したグラフを参照願いたい.

「このサービスは、政府統計総合窓口(e-Stat)のAPI機能を使用していますが、サービスの内容は国によって保証されたものではありません。」


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