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修了間近。パリでの修士課程を振り返る

夏のソルド&バカンスシーズンで観光客の賑わいが日に日に増えているパリ。一方アカデミックイヤーは終わりに近づいている。
最近、修士課程でのすべての課題提出・発表が終わった!後は成績開示を待つだけ。手応え的には修了できる見通し。長かったような短かったような…

ここ2−3ヶ月はコースワークでもインターンでも論文を読んだり課題に取り組んだりで、アカデミックワーク以外のやりたいことに取り組む時間がほぼなかった(ちょくちょく遊びには出てたけど)。7月からは今後の身の振り方も考えつつ、新しい目標を整理して実行していきたい。

その前にパリでの修士課程のことを振り返ってみると、いろいろ日本の教育システムとの違いがあることに気づいたので、この機会に書き留めておこうと思う(ただし個別の事例と感想なのであしからず)。

入学式・修了式がない

パンデミックうんぬんに関わらず、どうやら大学あげての入学・卒業イベントはないらしい。
入学時の主なイベントは専攻内のオリエンテーションくらい(自分の場合、入学当初は東京からオンライン参加だったので、もし入学式があっても関係なかったけど)。
卒業・修了式もないらしく、海外留学で思い描きがちなアカデミックガウンとかハットトスもない。これはちょっと寂しいかも。
(博士号の学位授与式はあるみたい ↓)


クラスメートが多様

クラスメートはフランス人だけでもルーツ・専門性が様々。そこに留学生が加わってさらに多様に。普段は英語でコミュニケーションを取り合うけど、アクセントや英語レベルも幅が広いので、お互いを理解するのはまぁ大変。グループワークではストレスに感じることも多々あった。

授業の選択肢がない

基本的に修士課程のカリキュラムはほぼ必修科目で、選択科目みたいなのはほぼなかった(例外的に、他専攻・他大学の授業を履修している人は稀にみかけた)。履修ミスのリスクはないけど、「落とせる科目」は基本ない。あとクラスメートは常に同じメンツ笑。

1コマの授業時間が長い

基本、1コマ3時間(午前1コマ 9:00-12:00、午後1コマ 14:00-17:00)。日本に比べ、少ない科目数を集中的に学ぶというイメージ。

グループディスカッションや発表など、学生が能動的に動く活動が中心となるので、長時間レクチャーを聞くわけではない。意外とあっという間に終わる。

授業の質は必ずしも高いとはいえない

シラバスは割といい加減で、授業で何が求められているか、次の授業で何を準備すればいいかなどが分かりづらいのがデフォ。不明瞭なことは質問して確認する。

学生も教員も遅刻は割と当たり前で(交通機関の事情などもある)、授業のはじめの10分は人が集まるのを待つだけだったりする。

グループワーク、ペアワーク多めで、学生間で学び合うスタイルが多い。ただし専門性の高い立場からのフィードバックが物足りないと思うことも…

学年代表、教育コーディネーターがいる

各専攻で、M1とM2での学年代表が選出される(学級委員長的な)。教員側に学生の意見を伝える際には、彼らが意見集約のハブになる。

また、教員とは別に、履修の案内や相談を受け付けるコーディネーターがいる。日本の大学の学務・教務系の窓口の職員にあたるけど、より学生に近く、またほとんど博士号持ち。

インターンシップの比重が高い

単位取得にあたって、インターンシップの占める割合が異常に多い。2年間の修士課程を1年目前半・後半と2年目前半・後半の4つの期間に分けると、1年目前半以外は企業または研究機関・国際機関等でのインターンシップに取り組む必要がある(4−6ヶ月インターンを3回)。

日本ではインターンシップの単位化について「教育の丸投げ」という批判を見かけたこともあるけど、まさにそれを堂々とやってる感じ笑。個人的には、英語でのアカデミックライティングなどもう少し高等教育機関でしかできないトレーニングの機会を提供すべきだと思う。

フランスでは2ヶ月以上のインターンは法的義務で対価が発生するので、実務経験・単位・お金(安いけど)の面で学生にはメリットも多い。ただ、留学生にとっては希望分野でのインターンの機会を得るのは容易ではない。

成績は20点満点

各科目の成績は20点満点で評価される。12点が及第点。15.5点とか小数点もあり。満点をとれるのは稀らしい。GPA換算とかめんどくさそう…

経済的負担が低い

学費が安い。うちの研究科はEU外出身者もEU出身学生と同じ学費設定だったので、年間4万円近くしかかからなかった。それどころかインターンシップの報酬で実質学費は無料(というか黒字)に。

また、留学生でも行政に家賃補助を申請できるため、住居費の負担が少なくなる。自分の場合は家賃半額相当が毎月銀行振込みで補助されている。また、アパートは家具備え付けのところがほとんどで、転入・転出に伴う費用も少なくて済む。

皆社会保険(Sécurité Sociale)で、留学中の医療費も若干カバーされる。留学1年目は日本で留学保険をかけてたけど、2年目は日本の保険は継続しなかった。
※救急外来に駆け込んだ時は、さすがに社会保険と任意保険(インターンシップのために任意保険にも入る必要あり)を使っても数万円の自己負担はあったけど。

25歳以下なら交通機関や文化施設等での学割も幅広い。その上もし奨学金を取れていれば、かーなり色んなことができると思う。


以上、ざっと列挙してみた。単純比較をすることはできないけど、海外の教育システムを体感できたのは貴重な経験だった。

パリでせっかく経験や人脈を深めることができたので、修了後もそれを活かせることをやっていきたいなぁ。