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西表島で出会った本物のエコツアー

「どうしてうちのツアーに決めたの?」

西表島の上原港でピックアップ後、ピナイサーラの滝1日ツアー(カヤック&トレッキング)へ向かう道中、ガイドの村田塾長(村田自然塾)は私たちに聞いた。

「ブログで口コミを見つけて、かなり詳しく丁寧に説明してもらえるとのことだったのでお電話させて頂きました!」

そう答えると、

「インターネットの口コミは自分で見た事がない。ネットの影響で他のツアー会社にお客を取られてしまっている。」

確かに上原港では石垣島から到着するフェリーに合わせ、多くのツアー会社の若いガイドがお客さんをピックアップしていた。このピナイサーラの滝ツアーは沢山のツアー会社が催行している。

ただ、この村田自然塾のツアーは他と全く異なっていた。まずカヤックのスタート地点とトレッキングも含めたツアーコースはおそらくどこも同じであり、川の近くの駐車場に車を止めて川まで歩いて降りて行く。そんな中、村田塾長は駐車場を超えてより川の近くまで車を走らせた。森の中に立ち入り禁止のコーンが立っており、その中に入っていくと村田自然塾の小屋があった。そこで沢登用のブーツやライフジャケットを着て、さて出発と思いきや、木製のベンチに座り、塾長は自身の撮影した写真が掲載された図鑑のような本を広げ、西表島の気候、特徴、動植物などについて丁寧に15分程度で説明してくれた。ツアー前の予習である。

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実は村田塾長は、環境省や研究機関などから依頼を受けてイリオモテヤマネコや他の動植物の調査を行ったり、世界で初めてイリオモテヤマネコの泳ぐ姿を写真に収めたり、またイリオモテヤマネコの保護活動にも尽力されている、西表島の自然を最もよく知る方であった。40数年前に西表島に移住され、ピナイサーラの滝ツアーを最初に始めたのも村田塾長だという。


村田塾長の撮影した写真が掲載された紙面

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その後、川まで歩く道中も、その場で見つけた植物や生き物の生態、西表島の水事情、文化背景などを時々立ち止まりながら、分かりやすく説明してくれる。

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うちのツアーはゆっくり進んでいたお陰で、他のツアー会社は周りに全くいなくなった。(村田塾長からは私たちがその日、西表島内に宿泊予定であること、帰りの時間を気にしなくて良いことを確認されていた。)

カヤックに乗ってからもマングローブの種類やその周辺に生息する鳥や水生生物について詳しく説明して頂きながら3-40分程度、他のツアーがいない川をのんびりと満喫できた。

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トレッキングのスタート地点である川岸に着くと、沢山のカヤックがひしめき合うように係留されており、ツアー客の多さを物語っていた。ピナイサーラの滝上を目指す1時間半弱のトレッキング中も時々立ち止まったり、休憩を挟みながら、イリオモテヤマネコの生態と発見から現在までの研究経緯、シロアリやクモなどの昆虫類、亜熱帯特有のガジュマルを始めとする多様な植物などについて、非常に分かりやすく解説して下さった。その幅広い知識や経験には驚いた。

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中でも最も興味深かったのは西表島の「黒いダイヤ」の話。トレッキング開始直後、川の近くで塾長が拾ってきた黒い石のようなもの。

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「この黒いダイヤと呼ばれたものは一体なんでしょうか」と塾長。

滝上に着く手前の休憩でこの黒いダイヤは「石炭」であることを教えてくれた。ペリーの黒船が船の燃料として石炭を求め西表島に来たこと、その後炭鉱ができ多くの人が過酷な強制労働を強いられ、マラリアに苦しみ亡くなったことなど、西表島の悲しい歴史を知り、当時採掘された石炭が今でもその辺に落ちていることから、すごく現実味を感じた。その後は滝上でランチにスパムおにぎりを食べて絶景に癒されてから、ゆっくり下山。

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下山後は、他のツアーが去った後、私たちだけで滝つぼを独り占めして泳いだのがとっても気持ち良かった。

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その後カヤック乗り場まで行くと、沢山あった他のカヤックは全てなくなっており、私たちのカヤックだけが残っていた。

すでに17時ごろ、夕暮れ期の静かな川には様々な鳥、動物の鳴き声、水の音だけが響き、格別な時間だった。(下の写真、分かりづらいが左上に天然記念物のカンムリワシが写っている)

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16時ごろに終了予定だったツアーは17時半ごろに終了、村田塾長の西表島への愛、せっかく訪れたツアー参加者に、島と自然について多くのことを知ってほしい、学んでほしいという強い気持ちを感じるツアーだった。「自然塾」という名前の通り、これは単なる観光ではなく、「学びの場」であり、「エコツアー」のあるべき姿だと感じた。

そんな村田自然塾のツアーにお客さんが減ってしまっていることは非常に悲しい現実である。必ずまた西表島を訪れ、ぜひとも村田塾長とまたお会いしたいと思う。それまで、どうかお元気で頑張っていただきたいと願う。

村田自然塾HP



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