果てしない大空と渡り鳥
東京には空がない――と言ったのは智恵子さんだ。
大学に入り東京で暮らすようになったとき、自分も思った。たしかに、東京には空がない、と。
北海道には空がある。大きな、大きな空がある。立ち止まってわざわざ見上げなくても、歩いている道の先に空は見える。振り向くと地平線まで続く畑の上に青い空。はるか遠くの山脈の稜線のその向こうにも、ほら、空がある。
果てしない大空と ♪――と唄ったのは松山千春さんだ。
故郷の北海道を懐かしみながらカラオケでときどき唄わせてもらっている。
唄いながら思い出すのは大空を横切り飛び去って行く渡り鳥たちの群れだ。
大きなV字を描いて、仲間と声をかけあいながら飛んでいく渡り鳥たち。学校の帰り道で渡り鳥を見つけると自転車をこぐのをやめて、渡り鳥たちが隊列を微妙に変えながら飛び去る姿をいつまでも見送った。
翼があれば私もついていくのに・・・。鳥たちと一緒に行けば幸せになれるかな・・・・。そう思った。
山のあなたの空遠く「幸い」住むとひとのいう――と詠んだのは、えっと誰だったっけ?
山のあなたの空遠くに憧れ、渡り鳥の姿をいつまでも見送っていたあの頃の私。
あの頃は分からなかったけれど今なら分かることがある。「幸い」はそんな遠くには住んでいない、もっと近くに住んでいること。そして渡り鳥たちは「ウトナイ湖」で羽を休めるということだ。
苫小牧(とまこまい)のウトナイ湖。ここには数えきれないほどの渡り鳥が集まる。数万羽ものマガンやカモやハクチョウたち。なかでもオオハクチョウの迫力ある姿が見られるのは冬季で、ベストシーズンは2月~3月。湖が一番にぎわう季節だ。4月初めには北へ向けて飛び去ってしまう鳥が多い。
ウトナイ湖は千歳空港からも近く、車で20分くらい。飛行機の出発時刻まで少し余裕があるなぁ、というときは是非、ハクチョウたちに会いに行ってみてほしい。
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