歯周病をやっつける「ロイテリ菌」のすごい効果 #3 糖尿病がイヤなら歯を磨きなさい
日本人の8割がかかっている「歯周病」。実は糖尿病をはじめ、高血圧、脳梗塞、心筋梗塞、肺炎など、命にかかわる病気の原因になることをご存じでしょうか? 医師・西田亙先生の『糖尿病がイヤなら歯を磨きなさい』は、歯周病と全身の病気の驚きの関係から、予防と改善に役立つお口ケアの方法まで、私たちが知らない健康の新常識を教えてくれる一冊。読んだらきっとすぐに歯を磨きたくなる、そんな本書の中身をご紹介します。
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お口に花を植えよう
歯周病を治すには、悪玉菌を減らす必要があります。
公園に花が咲くと、誰に言われたわけでもないのに若者は自然と夜にゴミを捨てなくなり、汚かった公園の周りはきれいになりました。それと同じように、わざわざ敵対関係をつくって戦わなくても、悪玉菌が自発的に退散していく――炎症が鎮まる――方法があります。
その方法とは、お口にも花を植えること。すなわち、善玉菌を増やすことです。
悪党を全部駆逐するのはさすがに難しいですが、隅のほうに追いやって悪玉菌の勢力を小さくし、お口の中を善玉菌だらけにするのです。体の中に住んでいる善玉菌をお口の中で増やすことで、体内菌のバランスは劇的に改善されます。
これは、ヨーロッパで生まれた「プロバイオティクス」という考え方です。「お口に花を植える」というのは、このプロバイオティクスに基づいた考え方です。これに対して抗生物質のことを「アンチバイオティクス」と言います。「アンチ」という接頭辞からもわかる通り、抗生物質とは戦いの武器なのです。
お口の中で戦争を続けるのか。それともお口に花を植えるのか。長い目で見れば、戦うよりも、善玉菌の力を借りてお口の環境を整えていくほうが、ずっと安全で合理的です。
多くの人にすすめたいロイテリ菌
そして、戦わずして炎症を鎮めてくれる善玉菌の1つが、ロイテリ菌という乳酸菌です。
スウェーデンのバイオガイア社という企業が実用化した乳酸菌ですが、もともとは人間の体――乳房、あるいはお口――から発見された善玉菌です。つまり、自然由来・健康体由来の乳酸菌なのです。
もともと、ロイテリ菌は元気な人の体にたくさん住んでいたはずですが、母乳育児の減少や食生活の変化など、生活環境・社会環境の変化にともなって、悪玉菌の勢力が拡大し、体の外へ追いやられてしまいました。
現代人の体にも、自前のロイテリ菌が全然ないわけではないのですが、量がきわめて少なくなっています。ですから、補ってあげることで初めて、善玉菌が増え、体内の細菌のバランスが良くなっていくのです。
私はこのロイテリ菌を多くの人にすすめたいと思っています。
自然由来で副作用がないことはもちろんですが、ほかにも理由があります。それは科学的な裏付けが非常にしっかりしていることです。
ロイテリ菌を摂取すると、プラセボ(偽物の薬)を摂取したときと比べて明らかに身体症状が改善するという研究が、世界各地から報告されています。残念ながら日本の医学界ではあまり知られていないのですが、ロイテリ菌の学術論文は500件以上にのぼります。
日本では、乳酸菌というと一般的には腸に作用する、腸のための善玉菌と思われることが多いようです。しかし、乳酸菌の効果はもっと多様です。腸だけに影響するわけではありません。ある種の乳酸菌は、お口の中でむし歯や歯周病菌の働きを弱めることが明らかになっています。
そして乳酸菌にもさまざまな種類があります。日本古来のお漬け物にも乳酸菌が含まれていますし、最近は、日本の企業や研究施設で実用化される乳酸菌も増えてきました。スーパーマーケットの乳製品売り場に行けば、ヨーグルトの種類だけでも数え切れないほどあります。
日本人は世界の中でも、乳酸菌を比較的たくさん摂取している国民だと言えるでしょう。ただ、臨床研究(人間を対象にした研究)の歴史という点で眺めると、蓄積された研究データが、世界と比較すると圧倒的に少ないのです。
これに対して、スウェーデンで研究されたロイテリ菌には、全世界の2万人近い人を対象にした臨床研究の裏付けがあります。世界中から集められた乳酸菌の中から、本当に安全で効果に間違いがないと確認されたもの、それがロイテリ菌なのです。
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