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Re:脚本ユニット 一ノ瀬姉妹 ⒍真のパートナー 686字 全7話

ふとひらめいたように、伊織が目を輝かせる。
「解散はしないけど、改名しない?」
「え?」
「一ノ瀬夫妻」
話が飛躍しすぎて、しっぽすらつかめない。

「ほんとのパートナーになりたい、つってんの。公私ともにってヤツ」
ニブイの鈍と純は似ているからしかたないかと、さんざんな言われようだ。

修業時代に純が書いた脚本のタイトルを、伊織が口にする。
「あれ、よかったよな。トガってんなーって血が騒いだ。こいつだけには負けないって」
たぶん、そのときに好きになったと、さらりと言う。
「気づくの、遅くなったけど」

***

コンビ名をつけようと言いだしたのは、伊織だった。
一宮純と清瀬伊織で、一ノ瀬姉妹。
「いや、なんで姉妹?」
「だめ?あの歌の上手い、のほほん姉妹も他人だし、いんじゃね?踏み絵にもなるしさ」

女ふたりだと甘く見て近づくやからを、油断させるだけ油断させ、ここぞというときにきばをむく魂胆らしい。
どうにも好戦的なのが気にかかるが、それはこっちでコントロールすれば済むことかと、純は腹づもりをしたのだった。
名前も顔も女に間違われるから、それを逆手に取って武器にする。
そのしたたかさに、純はほれぼれした。

***

イギリス仕込みの手慣れたハグと、仲直りとはじまりのキスをした。
伊織はヤバ…とつぶやく。
「なに?」
「いや、しっくりきすぎて、コワ。もしかして、姉妹だったのかな…前世」
「やめて」

入籍するにしても、別姓は譲れないと、伊織はまだ飛躍したまま戻ってこない。
ニッポンの法律まで飛び越える勢いだ。
「一宮純のマネジメントに信頼と実績があるんだから、当然でしょ?」
いとも簡単に、純のわだかまりを吹き飛ばしてしまう。

(つづく)


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