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Re:逃走癖女神 ⒎最強夫婦 連載恋愛小説

紗英は、朔久さくと面識があるという。
「目上の人間のツボを心得てるっていうか、あれはのし上がるタイプだな」
プロデューサーの自宅に出入りするくらいだから、筋金入りだ。
声優にしておくにはもったいないと、制作側に推す人間もいるそうだ。

「てゆーか、気いつけなさいよ。都」
「ん?なにを?」
「あんたみたいな世間知らず、カモにされて終わりだから。しっかり距離保こと」
疲れた笑いを返してしまった。
高額接待を受け、なおかつ次の約束まで取りつけられている。
知らないほうが、紗英の美容にいいだろう。

***

締め切り間際に彼女が様子を見に来るのは、恒例行事になっている。
が、今回は事情がちがった。
すでにデータを送ったと伝えれば、痛いのは腹か頭かと血相を変えて騒がれる。

アニメが好きで好きでしょうがない大人たちが、命をけずって産み出す作品。
その大事な設計図を、こんなド素人がになうだけでも心苦しいのに、期日を越えるなんてとてもできない。
「短期間で成長しすぎ?」
「自分で言うか」
ほぼひとりで完結する詩の世界とは、わけがちがうと悟ったのだ。

***

紗英がねじ込んでくれた漫画家さんのセンスが突き抜けていて、小説の挿絵さしえにとどめておくには恐れ多いクオリティだった。
それもひっくるめて、重忠のお眼鏡にかなったのだろう。

原作が売れているわけでもないのに大胆にも採用する住吉重忠は、ちまたでは「ギャンブラー住吉」と呼ばれているとか。
元ヤンとギャンブラーって、最強の組み合わせじゃないか。
「なんだって?」
住吉夫妻の顔をつぶさないためにも、気合いを入れて仕上げてみました。

(つづく)
▷次回、第8話「都、ラジオデビュー」の巻。


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