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便利屋修行1年生 ⒔天使の護衛 連載恋愛小説

ストーカー被害者の付き添いをすることになった。
対象者は女子高生、キューティクルがまぶしい田代映美えいみ
「こっちのイケメンのがいい」
沢口のこめかみがピクリとした。
「えーと、男の人だと目立つし、犯人を刺激するかもしれないので…」

映美は、綾の正気を疑うかのような目つきになる。
「え?なんでそんなテンションなんですか?めっちゃかっこいいですよね!背え高いし」
ヤバくないですか、と言われても。

「表向きはこちらの本上ひとりですが、念のため私も同行します」
営業スマイルの沢口にさとされ、毎日会えるとご満悦の映美。
どうしても確認したいことがあると、その口調が深刻さを帯びる。
「妻帯者ですか?」
サイタイシャ…?ふたりしてほうけてしまった。
「俺ですか」
「そうです。オレです」

妻子はいないと聞いて、ガッツポーズ。
「あ、ちなみに彼女いても気にしないんでー。あとわたし、来月で18。オトナ、です」
世渡り上手だなあと感心してしまった。

***

「それにしても、パワフルな空元気でしたねえ」
沢口が意外そうに眉を上げた。
「気が紛れるかもしれないんで、思いっきりやさしくしてあげてください。しかめっ面禁止で」

しばらくすると、映美は綾になついた。
沢口への興味はというと、観賞用なんで、と実にドライ。
関心が持続しないのは、心がざわついて落ち着かないせいだろう。
不安を押し殺す気持ちは痛いほどわかるから、綾は時間の許す限り彼女の話を聞くことにした。

***

「え…終了?長期護衛って聞いてましたけど」
所長はどこか歯切れが悪い。
「は、まさか。沢口さん、手を出し…」
綾が疑いの目を向けると、雑に頭をはたかれた。

田代映美の身は心配ないと説明される。
「じゃあ、ほかに問題があるんですね?」
所長と沢口が、一瞬顔を見合わせる。
気の多いストーカーなのか、早くもターゲットが変わったらしい。
「よかったあ。強がってたけど、すごいおびえてたから。これで映美ちゃん、安眠できますね!」

働きだして間もないバイトの分際で、綾は有給をとらされた。
便利屋はもうからないとしょっちゅうこぼしているのに、所長の言動は矛盾している。

(つづく)

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