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mandheling
Re:逃走癖女神 ⒓恋のリハビリ 連載恋愛小説
お泊まりセットが必要だと言って都はコンビニに寄り、店員に裏口を教えてもらう。
あやしい男に追われているという、あやしすぎる口実で。
「お待ちしてました、女神」
ドアの真横の壁に寄りかかり、朔久は執事のような上品な笑みを投げかけてくる。
読み切られていて、歯ぎしりしたくなった。
***
結局、何も購入しなかったので、着の身着のまま敵地に潜入。
パンプスを脱がないうちに、その場で襲われた…
わけではなく、彼はレトロな手動式コーヒーミルでガリガリと豆を挽き始めた。
部屋いっぱいに広がる香ばしいアロマに、早くも都は戦意喪失の危機に陥る。
「こうしてると、気持ちが落ち着くというか、すっきりします」
蒸らす時間を置いてから、数回に分け、ゆっくりとていねいにお湯を注ぐ。
「書道で墨をすってるときの感覚?」
「ですね」
たしかに、所作を眺めているだけでもどこか安らいだ気分になる。
淹れたてのハンドドリップコーヒーは、専門店を思わせた。
苦みが効きつつも、ふわっとやさしい香り。
「この豆って、目ん玉飛び出るくらいのお値段?」
標準的な価格だと、朔久ははぐらかす。
「おいしかったです。それでは、わたくしはこのへんで」
「そのくだり、いりますか」
(つづく)
▷次回、第13話「ビタースウィート」の巻。
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