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[UFC304]印象に残った試合をピックアップ!

ウェルター級のタイトルマッチをメインに据えたUFCのナンバーシリーズ304は、豪華カードが並んだ華やかなイベントとなっていた。

①●レオン・エドワーズVS.○ベラル・ムハマッド※新王者


引用元:©︎Getty Images / Ben Roberts Photo

UFC304のメインイベントとなったウェルター級のタイトルマッチ。

この2人の対戦は2度目となっており、1度目はエドワーズの指がムハマッドの目に入ってしまい、試合続行が不可能となったためノーコンテストになっている。

そこから互いに連勝を重ね、エドワーズは当時「絶対王者」として君臨していたカマル・ウスマンを倒して新王者となり、ムハマッドはウェルター級の猛者を続けて下し5連勝を記録したことで王座戦にまで辿り着いた。

そうして3年以上の時を経て組まれたこの再戦は、その長い時間の中で生まれた違いを浮き彫りにするものとなる。

王者エドワーズは、あのウスマンに2度勝利しているためその実力に疑いはないが、2勝ともかなりギリギリの勝利であり、エドワーズのウィークポイントもよく表れた内容になっていた。

一方のムハマッドはタフネスとスタミナを活かした粘り強い立ち回りで勝利を重ね、ベースにあるレスリング技術にも磨きを掛けてきたことで、ファイターとしての厚みが増した印象を受けるような変化を遂げていた。

エドワーズはアデサニヤのように中間距離は強いが圧力で距離を潰された場面で苦労する傾向があり、スタミナにも不安があるため後半に失速する弱みがあった。

なので5Rを行う王座戦はエドワーズにとって厳しいものとなる可能性が高い。

特に相手がムハマッドのようにスタミナと耐久力に自信があるタンク系のファイターの場合は尚更だろう。

今回ムハマッドはそういったエドワーズのウィークポイントを徹底的に攻め、チャンピオンの長所を封じ込めることに成功していた。

距離を詰めケージ際に追い込んで壁レスで削りながらコントロールする。

これは前に出ることで自身が致命的な一発を貰わない、もしくはそういった脅威的な攻撃を打ってこないという算段が立てられていないと選択することが難しい戦術だと思うので、ムハマッドは前に出続ければエドワーズは怖くないと読んでいたのかもしれない。

実際試合はその通りの流れとなり、エドワーズはムハマッドを危険に晒すような展開をほとんど作ることは出来なかった。

そうしてムハマッドはエドワーズが持つ、ある種の力無さを突くことで彼を無力化し、危なげなく王座を奪うことに成功した。

ミドル級のデュ・プレシのように頑強でスタミナもあるタイプのムハマッドが今後、ウスマンやラフモノフといったファイターたちとどういった戦いを繰り広げていくのか。

ウェルター級はこれでさらに面白くなってきた。

②○トム・アスピナルVS.●カーティス・ブレイズ


引用元:©︎Getty Images / Ben Roberts Photo

ヘビー級の暫定王座を賭けた一戦。

立ち上がりはブレイズの長い攻撃が先にヒットしており、ペースを掴んでいくかのように見えたが、パワーや技術を相手に届けるために必要なスピードの部分で大きく上回るアスピナルがブレイズの攻撃に苦労することはなかった。

速いステップとパワーを合わせ持つアスピナルは一発でブレイズに深刻なダメージを与えると素早いパウンドで追撃を加え、レフェリーのストップを誘った。

これでアスピナルはアレクサンドル・ボルコフ、セルゲイ・パブロビッチ、カーティス・ブレイズとヘビー級のトップファイターを撃破することに成功した。

自身が暫定王者であることを改めて証明したアスピナルが次に狙うは当然正規王者であるジョン・ジョーンズの首となる。

ただ、ジョーンズは次戦でミオシッチと戦うことが予想されており、健康状態に不安のあるジョーンズがその後にタイトルマッチを行うとなると、その時は果たしていつになるのか。

全盛且つ勢いに乗っている現段階で暫定王者のアスピナルが王座挑戦の機会に恵まれないというのは、大きな損失と言っても過言ではないだろう。

王座獲得からしばらく試合を行えていないジョーンズのコンディションに付き合わされることになる挑戦者たちは、見通しを立て辛い状況下で現状維持に努めなくてはならない。

正規王者の代わりに挑戦者を退ける暫定王者のアスピナルはその時が来るまで現状を維持しておくことが出来るのか。

そう言った点も含めて今後のヘビー級の動向に注目が向けられる。

③○ムハンマド・モカエフVS.●マネル・ケイプ


引用元:©︎Getty Images / Ben Roberts Photo

試合前に大きな盛り上がりを見せていたモカエフとケイプだったが、オクタゴンの中では見合う場面が多く、互いに慎重な試合運びを見せていた。

特にケイプはモカエフのテイクダウンを警戒して「待ちの姿勢」を取ることが多く、手数が極端に少なかった印象。

それに対してモカエフも効果的な攻撃が出来ていたわけではなく、ケイプに比べてやや手数が多い程度であり、モカエフも待ちの姿勢を見せるケイプに主導権を渡さないために極力先手を打たないようにしていたことで、膠着状態がひたすらに続く展開となった。

しかし、ケイプの足にアクシデントが発生したことで状況は少し変化していくことになる。

足の親指に不具合が発生したケイプは、打撃を打ち込む際の機動力が明らかに低下しており、踏み込みや追い足が付いて来ていないような場面が見受けられるようになった。

ただ一発のパワーや集中力は低下していなかった為、故障を抱えるケイプに対してもモカエフは効果的な攻撃が出来ないままでいた。

そんなお互いに印象を付けることが出来ない展開が続いてはいたが、モカエフは要所でケイプからテイクダウンを奪うことに成功しており、それは手数の少ないケイプに対して差をつける要素となって働いた。

その結果、モカエフが判定3-0とジャッジの支持を得て勝利する形となった。

ただこの内容を見ると、どちらが強かったというよりも、より消極的だったのはどちらかということが判断されたように感じる。

評価できるポイントが少なすぎるが故に消去法のような判断に落ち着かざる負えないような、特にこれといった動きが見られないとても慎重で繊細な一戦になっていたのではないかと思う。

そういった試合前の盛り上がりと地味な試合内容の落差や、ポイントを失えないミス出来ないという緊張感の高さを感じたことで印象に残ることになった一戦。

UFCリリースの情報が出たモカエフ


引用元:Sports navi / NATHAN DAVIES/COURTESY IMMAF

UFC304が終えた後に行われたデイナ・ホワイト代表からの発表で、UFCは契約満了を迎えるモカエフとの契約更新を行わなかったことが明かされており、今回の試合で勝者となった無敗のファイター「ムハンマド・モカエフ」はUFCからリリースされることになったことが報されている。

その経緯にはファイトマネーに関する話や諸々の事情(ネガティブな)があるようだが、無敗のダゲスタン出身ファイターがリリースされるというのは非常に衝撃的である。

このニュースは結果的に今回のモカエフVS.ケイプ戦の勝者が不在となってしまったことを表しており、この試合の結果が今後にもたらす影響とその流れが消えたことを意味していると言えるだろう。

それはつまりタイトル戦線への影響や変化が生じることを示しており、UFCフライ級のプロスペクト且つ次期タイトル挑戦者にも数えられていたモカエフがいなくなるということは必然的に勢力図が変化していくことになる。

これは世界のフライ級市場にも影響を及ぼす動きでもあるため、モカエフが今後どこに落ち着くことになるのか、その動向に注目が向けられる。

もしかするとフライ級で活躍を見せる世界レベルの日本人ファイター、例えばBellatorとの契約下にある堀口恭司がモカエフと対戦する日が来る可能性もあるかもしれない。

フライ級の市場は他の階級と比べると非常に小さいので、モカエフがUFCからリリースされた今、その可能性は比較的高いものになっているのではないか感じる。

バンタム級でケイプとガチンコ勝負をして一本勝ちを収めた堀口なら、最高峰の舞台から降りることになってしまったモカエフを仕留めることが出来るかもしれない。

グラップリングは技術で対応できる上に、体格差もほとんどない、その上パワーでは堀口の方が勝っていると思われるので、かなり期待できる組み合わせになるだろうと思われる。

耐久力の面で不安はあるが、勝負強さでは上回っていると感じるのでUFCでは見られなかったモカエフが見られる可能性もあるのではないかと思う。

いずれにせよUFCから離脱した無敗のトップファイターが次に取る選択次第で、MMA界に大きな影響が及ぼされることになるのは間違い無いだろう。

世界最高峰のベルトが望めなくなった今、その燻るエネルギーを彼はどこに向けていくのか。

モカエフが選ぶ次のステージに注目したい。

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