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『初恋、ざらり』で涙したわけ

年々涙脆くなっていますが、最近涙した作品を思い返してみると、

9月末に最終回を迎えた『初恋、ざらり』というドラマが浮かんできました。

皆さんはご覧になりましたでしょうか。

ドラマの概要

このドラマは、軽度知的障がいと自閉症を併せ持つ「上戸有紗」と、有紗のアルバイト先の先輩「岡村龍二」の、2人のラブストーリーです。

新しい職に就いたばかりの有紗は、周りに障がいのことがバレないよう、教えられたことは些細なことでもメモをし、自宅に戻った後もそのメモを読み返していました。

でも仕事をこなすのは容易ではありません。 

何度教えてもらってもミスを連発し、優しかった人も、徐々に有紗への当たりが強くなっていきました。

岡村自身も、有紗のミスをカバーすることが増えていましたが、岡村から見た有紗は「いつも一生懸命で良い子」であり、真面目で熱心な姿に次第に惹かれていきます。

あるとき、帰るタイミングが同じになり、そのときに有紗から思ってもいなかった告白を受けます。

こんなおじさんでいいのかな、と引け目を感じる岡村。

すれ違いはありながらも、それを乗り越え、2人は付き合うことになりました。

一方、有紗は、障がいを隠しながら付き合っていることへの罪悪感に耐えられなくなっていきます。

言わなきゃ、でも言ったらこの関係が終わってしまう、と葛藤している最中、言いたくなったら教えてね、と優しく寄り添ってくれる岡村に安心したのか、
「私、知的障がいがあるんです。」と、思わず言葉を漏らしました。

岡村は、伝えてくれたことに感謝をしますが、その日から体を重ねることを避けたり、いつの間にかタバコを吸い始めたりと、有紗に対する姿勢が変わっていきます。

私が障がいさえもってなければ…という気持ちが大きくなり、岡村に負担をかけたくない一心で、仕事も家事も無理にこなそうとし始める有紗。

それでもやはり、他の人には簡単にできていることができません。

そしてそのタイミングで、やっぱり有紗ちゃんには難しかったかな、と陰で言われているのを聞いてしまいました。

有紗の心が砕ける音が徐々に大きくなります。

このシーンは観ていて胸が苦しくなりました。

普通になりたいと願う有紗と
普通ってなんだろうと戸惑う岡村

お互いが普通を意識しすぎるようになり、再びすれ違ってしまうのです。

感想

この記事のタイトルに涙したわけと書きましたが、涙した理由はドラマの主人公、有紗の境遇に共感し、いたたまれなくなったからというのが大きいでしょう。

というのも、私も有紗と同様、自分の存在を妬ましく感じていたからです。

「私を産まなきゃよかった?」と母親に尋ねるシーンがあるのですが、生きる価値が見いだせない有紗の虚無感に、何だか懐かしさが込み上げ、胸が張り裂けそうになりました。

私は、中学生頃から周りに追いつけなくなり、志望高に落ちました。
何とか合格できた高校で、勉強に本腰を入れようと特別進学コースへ編入したのですが、毎日のように再テストを受ける日々でした。再テストを何度も行っても、結局、センター試験の結果はボロボロ。

自分の可能性を信じてくれる父に誓って、もう一度センター試験を受けました。
それでも結果は見ていられないものでした。

信じてくれた両親や友達、そして教師や塾の先生にどう顔向けしていいか分からなくなり、誰にも聞かれないように部屋に閉じこもって、布団の中に丸まって、声を殺して泣いていた記憶があります。

努力しても実らない現実に、心はついていけず、私には生きている価値がない、とそう思うようになっていました。

現在、何とか就職ができて、働かせてもらっていますが、機転が利かない自分に腹が立つことが多く、やはり自分は欠陥人間なんだ、と悲観することもあります。

だからこそ、有紗の悔しさが沁みるのです。

普通に生きられている人が羨ましい。
そつなく人生を順調に歩んでいる人が羨ましい。

ですが、私と有紗は自分のことしか見えていないところもあると感じています。

衣食住が豊かな日常を、当たり前に過ごせているだけでも幸福なのです。

そして、できないことは多くとも、
どんなときも支えてくれるパートナーがいて、帰省する度に盛大に喜んでくれる家族がいて、私のたわいも無い話を素敵な笑顔で聞いてくれる友達がいる。

みんながいてくれるからこそ、私は生きる価値があるのだと思わせてくれます。

悲観的になっているときほど、目の前の身近な幸せに気づきにくくなるものですが、きっと誰かが自分を想ってくれていると思うと、生きていてもいいんだと思えるような気がします。









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