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千早茜『しつこく わるい食べもの』

 食事エッセイというと、よくあるのは「この食べ方は良い、この食べ方は良くない」といったものや、日常の食生活を綴ったもの。
 しかし、この本は一味違う。
「これは好き! これは嫌い! その食べ方は良くない!? そんなの知るか! 私は食べたいように食べる!!」がこの本のスタイル。
 パフェ先生に教わりながらパフェを食べたり、ザンビアにいた頃の食生活を回想したり、赤ソーセージが無性に恋しくなったり……。
 でも、それが変わってしまうのが、コロナ禍の緊急事態宣言下。
 好きなお店は閉まってしまう。百貨店も閉まってしまう。緊急事態宣言が開けても、なんとなく、飲食店には友人とは行きづらい。
 著者の食生活に否応なく影響を与えてくるコロナ禍。
 そっか、こんな影響もあったんだな、と改めて思わされた。
 私は著者とはあまり食事に対する態度が似ていない。食に執着はなく、嫌いなものは嫌いで好きなものは好きだけど、だからと言ってどうしても好きなものを食べたいわけじゃない。でもこのエッセイに惹かれてしまうのは、きっと自分を包み隠さない著者の態度に憧れるから。
 変わっていく世界で、著者も直木賞を受賞したけど、このまま、このままでいてほしい。私の憧れる、千早茜のままで。

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