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読書感想 山崎富栄 雨の玉川心中

山崎富栄さんは、昭和23年に太宰治とともに玉川に身を投げて亡くなりました。
28歳だったようです。

ネットでお写真を拝見すると、とても美しい方です。
日本初の美容学校創始者の父親を持ち、ご自身も美容師として活躍されていたようです。

その当時英語も話せて、戦後は進駐軍行きつけのキャバレーのホステスさんの髪結いをしており、女性にしてかなりの財を成した、聡明な方だったようです。

家庭のある太宰治に「死ぬ気で恋愛してみないか?」
と言われて、本当に死を覚悟した恋愛をしてしまうのですね……。

こちらの作品ですが、小説ではなくて日記です。ですので、恐らくは彼女の本心が書かれています。
青空文庫で遺書も含めてほぼ全文読めます。

正直、そんじょそこらの恋愛小説を完全に凌駕していると思います。(あくまで私の個人的な感想です)
そりゃあ日記ですもんね……。

読んでいてこっちが胸が痛くなってしまいます。

妻子ある男性に恋して愛人となり、ほぼ全財産を貢いで、挙げ句心中するなんて、なんて浅ましく愚かな女性なのだ、と世間では言われたようですが、
この日記を読む限り、私はそういう風には思えないのですね。
(太宰治の一体全体何がそんなに良かったんだ?とは思いますが…。太宰治ファンの方すみません…)

出逢った日から、もう命がけの恋愛モードです。すごいです。
「戦闘、開始!覚悟をしなければならない。私は先生を敬愛する」
とあります。
戦闘、開始!は太宰治の「斜陽」のなかの一節ですね。


現在ならまだしも、当時は妻子の有る人との関係なんて相当後ろ指をさされたでしょうし、何よりこれだけ高い教養と美容技術を持つキャリアウーマンが、
一時の気の迷いで太宰治との泥沼関係にはまっていったとは思えないんですよね…。

もう本当に、必然として出逢ってしまったのではないかと思ってしまいます。

日記の中に
「私も、今年か来年ぐらいまでしかない命だと八卦に占われてから今日まで気にしていましたが、でも、まだ元気に生きておりますもの」
と書かれています。
でも彼女は実際にこれを書いた翌年には亡くなっているのです。

なんだかぞっとするというか、運命って、あるのかな…とぼんやり思ったりしました。

決して不倫を肯定しているわけではないのです。
ただ、この世では許されない関係を持ち越してあの世へ行ったあと、一体どのような世界が待っているのか、気になるのです。
地獄へ堕ちるのか、それともハンデを背負って生まれ変わるのか……。


山崎富栄さんのご冥福を心からをお祈りします。






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